中医学:四君子湯

 補気の代表方剤である四君子湯です。四君子湯もまた単剤で用いられることは少ないですが、補気剤の多くがこの四君子湯の加減で作られている基本となる方剤です。

 構成生薬はエキス剤では通常6種類。
人参・・・12g
白朮・・・9g
茯苓・・・9g
炙甘草・・・5g
生姜・・・1.5g
大棗・・・1.5g

 四君子湯という名前でありながら6味?と思われるかもしれません。原点となる《和剤局方》にのる四君子湯は実は名前通りの4味で構成されています。

 実は原点となる四君子湯には裏の陰陽を調整する生姜・大棗は含まれません。また、中国で市販されている四君子湯も生姜・大棗を除いた4味で作られているようです。実は薬膳の教えが根付いている中華料理では生姜や大棗はお茶やお料理など様々なところで日常的に口にしますので、方剤にわざわざ組み込みません。日本の料理では生姜・大棗を常食としないのでエキス剤のような加減ができない方剤では最初から加味した状態で市販されています。四君子湯をベースにした六君子湯もまた2味多い8味で構成されています。

 四君子湯の効能は益気補中・健脾養胃です。四君子湯が適応している病態は脾気虚、消化吸収能力が弱まり、その結果「気」が不足したものです。構成生薬は全て補気作用があります。

 まず、人参の効能は大補元気・益気生津。補気の最重要薬であり、他のどの生薬より補気力は協力で、さらに脾や肺を潤してくれます。人参の類似として党参・太子参・西洋参などが用いられることがあります。補気作用は人参>党参=西洋参>太子参で、生津作用は西洋参>人参=太子参>党参です。特徴的なのは性で、人参が温、党参が微温、太子参が平性で西洋参が寒です。対応する病態が熱を持っているか、冷えを持っているかで使用する人参を変更することもあるようです。

 白朮は補気健脾・燥湿利水です。膩性のある人参と異なり、燥湿健脾の効果がある白朮が入ることにより、気の補充とともに気の生成や供給を担う臓器の機能を高め、気が動かす津液の動きを手助けします。

 茯苓もまた、利水滲湿作用があり、その効果は白朮より強力です。茯苓は人参とは好相性で、人参、茯苓とも安神効果があるので虚が強く精神状態が不安定な病態にはよく組み合わせて用いられます。四君子湯に茯苓を用いるのは六味丸にも通じる補うためにしゃを 少し入れる補瀉併用の考えです。醤油差しの穴を一方だけ閉じてしまうと醤油が出てこないように新しい物が入るときは少し余分な物を捨てる、逆にいらない物を捨てるためには少し補益をした方が効果的、という漢方の原則です。茯苓で水を動かすことで人参の補がより増強されます。例外的に茯苓など利水効果を併用しない人参製剤は人参単味の独参丸という処方です。独参丸は亡陽虚脱の重篤な状態に用いられ、そもそも病体から気血が脱している状態のため、茯苓などでの滲湿は用いず、人参での補益のみを行います。

ライムルさんによる写真ACからの写真 

 甘草は、補気力は弱いですが、広範囲に使用される潤性の補気薬です。甘草は諸薬の効果をとどめて効果を長持ちさせる、また滞りを通す通陽の作用があるため、補を重点とする方剤には欠かせません。逆に、湿が停滞した湿証・気滞証・嘔吐者には原則は使用を控えます。

 四君子湯は方剤全体では温性に偏り、脾胃を守る代表方剤です。気の機能の中でも特に温める効果が弱く、適応症はおなかがゴロゴロなる下痢、食欲不振、腹脹、嘔吐などおなかの冷えが基本になります。脾気虚から脾陽虚に進行しやすい病体です。これとは別に中気虚という気の昇提作用と固表作用が弱ったタイプの気虚もあります。こちらは気虚から気陷、もしくは気虚から表虚に移行しやすく、このケースには人参ではなく黄耆をベースにした方剤で補気します。補気薬は主にこの脾胃気虚の人参系と、中気虚の黄耆系に分かれます。

 四君子湯から派生した補気薬は多数あります。

異功散
 四君子湯に陳皮を加えた補剤です。補気健脾に理気が加わります。四君子湯同様の脾胃気虚症状に悪心・嘔吐・腹部膨満感・痛みなどの気滞症状があるときに用います。四君子湯で却って胸がつかえて上腹部がはるときに使えます。特に小児に効果があります。

白朮散
 四君子湯に藿香・木香・葛根を加えて健脾に止瀉を強めた方剤です。長期にわたる脾胃虚証に、津液内耗による嘔吐・下痢・煩渇などがあるときに使用します。

人参湯
 四君子湯から茯苓を引き、乾姜を足した方剤です。脾胃虚寒に用いる処方で、散寒作用が強い乾姜と言われています。脾虚が久しくなり陽虚まで達していたらさらに附子を加えると附子理中湯と呼ばれる方剤となります。

六君子湯
 四君子湯に陳皮・半夏を加えた方剤です。健脾補気・和中化痰で脾虚により痰湿が内にたまった症候に用います。咳・嘔吐・食欲不振など幅広く用いられます。

八珍湯
 四君子湯と四物湯を合わせた合剤です。気血両虚に用いられ、腹痛・食欲不振・下痢・悪寒・発熱・生理不順などに用いられます。