中医学:苓桂朮甘湯

 いわゆる立ちくらみなど起立性調整障害に用います苓桂朮甘湯。脾虚をベースに発生した寒飲を除く処方です。

 構成生薬は名前からわかる通りの4味です。
・茯苓・・・12g
・桂枝・・・9g
・白朮・・・6g
・甘草・・・6g

 適応症は脾虚の寒飲・効能は温化寒飲・健脾利水です。疲れやすい、食欲がないなどの脾虚症状から痰飲が上部を塞いで脳を滋養する陽気が上昇出来ない状態に用います。痰飲が胃の停滞して胸部に満悶の症状が現れることもあります。

 苓桂朮甘湯は傷寒論が原典となっております。

 「傷寒、若シクハ吐シ、若シクハ下シテ後、心下逆満シ、木上リテ胸ヲ衝キ、起テバ則チ頭眩シ、脈沈緊。汗ヲ発スレバ則チ経ヲ動カシ、身振振トシテ揺ヲ為ス者ハ、茯苓桂枝白朮甘草湯之ヲ主ル。(太陽病中篇 第67条)」

 太陽病(脈沈緊・頭頂強痛・悪寒)は基本発汗法を用いて治療をします。それを吐法や瀉下で誤治したため心と脾の陽気がともに損傷され、痰飲が生じた病態に苓桂朮甘湯は用いられます。このとき下焦の水の制御も失い、中下焦の水と気が一緒になって上衡した病態、ということを表しています。

 君薬の茯苓は穏やかな健脾利水薬です。同じく健脾利水の得意な白朮とともに脾陽を補います。セットで用いられることも多く、真武湯や桂枝加苓朮附湯などにも組み込まれています。よく似ていますが茯苓は脾腎に、白朮は脾胃に、さらに燥湿は茯苓、健脾は白朮のほうが得意など、少し色合いは異なります。

 それに対して桂枝と甘草は心の陽気を補います。特に桂枝は気を縦方向に通す力があり、ここでは心の陽気を温めて通行させ、気の上亢を下降させます。気の上逆による動悸や眩暈には必ず用いられます。この桂枝の特性は「引火帰元」と呼ばれ、虚証によって発生した虚火を、腎を温めて引き戻すと言われています。

 この縦方向に通陽する力のため、苓桂朮甘湯は起立性低血圧や立ちくらみによく用いられます。回転性のめまいは苓桂朮甘湯より沢瀉湯を用います。

 苓桂朮甘湯をベースとした処方に連珠飲があります。連珠飲は苓桂朮甘湯は四物湯の合方です。更年期障害といえば今では加味逍遙散が使われることが多いですが、連珠飲も効果的です。連珠飲は桂枝の作用で腎から浮き上がった熱を引き戻してくれるため、気の上亢によるのぼせ、動悸、眩暈に効果的で、加えて脾虚・血虚への配慮が組み合わされています。肝鬱による気滞症状が強ければ加味逍遙散ですがそれ一辺倒ではなく、腎虚による気の浮陽によるほてりの場合は連珠飲という選択肢も持っていたいものです。