心病の病気

 心は五行で「火」に属し、「温熱・向上・昇騰」の性質を持ちます。心は天体に置き換えると地上を暖める太陽です。地球に光や熱を降り注ぎ生命活動のエネルギーの供給を行います。同様に生体においても体を温め、気血の動きのためのエネルギーを供給し、さらに精神活動に深く関わります。心病の病気には陽の不調と陰の不調の2種;心陽心気の失調と心陰心血の失調です。

IWOZONさんによる写真ACからの写真 

心陽、心気の失調
 心陽心気は血脈の温煦作用、血液の循環を推動しており、さらに精神・意識・思惟活動をコントロールします。この心陽心気の失調には虚である心の陽気偏衰と実である陽気偏盛があります。

心陽衰弱
 心の陽気の偏衰は心陽衰弱として現れます。心の陽気が虚弱、もしくは不全となる病態で心陽の温煦作用が衰えるため、虚寒現象が現れます。虚寒とは寒邪に侵された実寒と違い、暖める作用の衰えにより相対的に寒が目立った状態のことです。心陽衰弱には心気虚と心陽虚に分けることができます。
 心陽衰弱の成因としては以下のものが考えられます。
・久病による損傷
・体質的な素因
・老齢による臓器衰弱
・強い邪気による心陽の暴脱

 心陽が衰弱すると心神不足となり、精神・意識・思惟活動が減退します。全体的に抑制的で、精神疲労、精神不振、反応低下、傾眠、呼吸微弱、懶言(話すのを面倒くさがる)などの症状が現れます。
 また、心血の推動が悪くなるため、血行が緩慢・凝滞したりします。そのため寒の症状や、悪化すると心脈を阻滞させることもあります。症状として、心悸・怔忡・前胸部の刺痛・寒がり・四肢の冷え・チアノーゼなどが現れます。
 心陽の衰弱がさらに進行すると、心陽が突然暴脱して顔面蒼白、四肢厥冷、多汗、脈微欲絶(途切れそうな細く柔らかい脈)などが現れます。
 心気虚衰とは、心の生理機能が低下、または衰弱した状態です。心の鼓動が減退すると、脈拍が弱くなったり、血脈が血で充足しなくなります。また、心気衰弱が肺に影響すると衛陽不固となり腠理が緩み自汗が現れることがあります。症状としては心悸・息切れ・精神疲労・倦怠・自汗・顔色蒼白・舌質淡 (赤みが薄くやせている)・脈細弱無力(糸のように細い脈)もしくは結代 (緩慢で時折とぎれる)となります。
 治療方剤の例として、心陽虚には拯陽理労湯、心気虚には炙甘草湯などが用いられます。

心火亢進
 心火亢進は心陽が炎上したものです。心火亢進は実火もしくは虚火と分けることができます。実火は火邪によって熱性が進行し、虚火は心陰の不足によりクールダウンができない状態です。
 実火は邪熱の侵入、痰火の鬱熱、五志化火が成因となり、虚火では陰血の損傷による心陽の相対的な亢進が成因です。
 成因は違えど実火と虚火による病態は似通ったところが多く、また実火によって陰血が消耗し、陰虚火旺という虚火証に移行することもあります。また虚火が体内で長期にわたって内在することで痰が発生し、邪熱を感受し、実熱が強くなることがあります。
 心火亢進が心神に影響すると興奮状態になり、心悸・心煩・不眠・多夢・体をもだえ動かす・言動に異常が身割れるなどの症状が現れます。重篤になると意識不明になることもあります。
 心火亢進のために血熱になると、血流が早くなり、心悸・脈数(早い)、舌質紅絳(鮮やかな赤)で芒刺舌(舌先にトゲ状の隆起)が生じます。また、血熱妄行により出血が起こりやすくなります。
 治療には導赤散(淡竹葉・木通・生地黄・甘草)や瀉心導赤湯(木通・生地黄・黄連・甘草・灯芯草)などが用いられます。赤は心を指しますので、どちらも心の治療を主軸にしています。

心陰、心血の失調
 心陰、心血の失調は、主として心陰虚損・心血不足・心血瘀滞などの病理状態として現れます。

心陰虚損
 成因は過度の心労、情志内傷、心肝火旺により心陰が消耗することです。
 心陰が消耗することで相対的に陽が亢進します。心陽を制御できなくなると浮陽状態となり、興奮状態が現れます。症状としては神志不安定・虚煩・不眠・心悸などが現れます。また、陰虚のため営陰が内守できないと、内熱の外泄するためさらに津液が流れ盗汗となります。
 心の陰虚火旺を原因とする病態には黄連阿膠湯が用いられます。補陰と清熱をかねており、興奮気味の精神状態に効果があります。

心血不足
 失血過多、脾虚による血の生成不足、情志内傷・心労過度による心血の損傷などが原因となります。心血の不足により脈は空になり細弱となります。
 心血不足は心神が滋養出来ず、精神意識が衰弱し、意識が散漫となったり精神恍惚となったりします。不眠・多夢などの症状が出ることもあります。また二次的に心血不足により心気の滋養まで手が回らなくなり、心気虚症状も現れることがあります。
 治療には補血効果を持ちながら清熱作用もある酸棗仁湯が用いられます。

心血瘀滞
 陽気不足による血液凝滞や、淡濁による血脈瘀滞、疲れ、寒邪、情志刺激などでおこります。これは心血の流れが悪くなることで心脈が詰まる病変です。悪血が心脈を詰まらせると息苦しさや前胸部痛となります。
 心血瘀滞となり気血の流れが悪くなると、心悸・征忡(発作性の程度の重い心悸)・前胸部の激痛が起こります。心陽暴脱となって汗が止まらず、四肢の冷えや伏脈(骨に当たるほど力を入れないととれないほど沈んだ脈)が現れます。
 治療には活血薬として広く持ちいられる 冠心II号方など。冠心II号方は一生薬で四物湯の効果を持つと言われる丹参に加え、血瘀とともに現れがちの気滞症状への配慮もされバランスのよい方剤です。

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