栄養学:タンパク質1

 タンパク質は英語では”protein”。語源はギリシャ語で第一の、を意味するproteiosに由来します。生体の構成成分として、また代謝物質としてもっとも大切な栄養素としてこのような命名をされたようです。

ガイムさんによる写真ACからの写真 

 タンパク質は私たちの体を作る主要な構成成分で、皮膚、筋肉、臓器などの主材料です。体のハード面を作るイメージが強いですが最近ではホルモン、神経伝達物質、免疫抗体などソフト面も多くがタンパク質が関わっていることが注目されています。

 体の60%が水分でできていると言われますが、タンパク質は15~20%、水分を除いたおよそ半分を占めます。そのタンパク質の吸収と消化について今回は調べて行きたいと思います。

 消化機能の低下で最も吸収が影響を受ける栄養素の一つがタンパク質と言われています。消化吸収力に関わるのは咀嚼力、消化器の括約筋の弱まりによる蠕動運動の低下、胃酸などの消化液の分泌低下です。消化力の低下でもたれ感が出やすくなるのでそもそも摂取量も減少します。

 タンパク質を消化するために必要な酵素は総称してプロテアーゼと呼ばれます。主に胃で分泌されるペプシンと膵臓から分泌されるトリプシン、キモトリプシンです。

 胃壁がどんな構造になっているかご存じでしょうか?胃の噴門部と胃体部には胃液を分泌する胃小窩という穴が存在します。胃小窩の内側にはペプシンの前駆体であるペプシノーゲンを分泌する主細胞と塩酸を分泌する傍細胞があります。この傍細胞からはpHが1から1.5にもなる強塩酸が分泌されます。前駆体であるペプシノーゲンがペプシンへ変わる至適pHは1.5前後ですので、この強塩酸は酵素活性を得るため必須です。また、この強い酸により長い鎖が折りたたまれた形であるタンパク質の立体構造(3次構造)が壊れ、プロテアーゼが作用しやすくなります。立体構造が壊れたタンパク質に対しさらに活性化されたペプシンが今度はタンパク質の長い鎖を切り、ポリペプチド、オリゴペプチドのような短い単位にします。このとき、アミノ酸にまでは分解しません。

 医師からの処方で多い胃酸の分泌を抑える作用が強いH2ブロッカーやプロトンポンプインヒビターと呼ばれる薬。特にプロトンポンプインヒビターは近年では多様が増え、自覚症状である胃の痛み、胸焼けなどの症状をかなり切れ味よく改善してくれます。ただ、もちろんその作用上タンパク質の消化能力は落ちるため、タンパク質不足による貧血などの副作用が生じることがあります。貧血のように、症状が表面化してくればまだよいのですが、タンパク質の利用は多岐にわたるため、潜在的なタンパク質不足の方は貧血症状以上に多いと考えた方が良さそうです。特に、胃腸が弱くて胃薬を服用しているケースでは、その胃腸を作るためのタンパク質が薬によって吸収ができなくなるという悪循環が生じる恐れがあります。胃酸の分泌を抑える胃薬は漠然と使用を続けないで、消化剤の併用など違う形で今の状態を離脱していく糸口を見つけるという視点は持たないといけません。

 同様に、酵素が活性を持つには適正温度があります。そのため、過度な冷飲食も酵素活性を落とし、消化力を悪化させます。暑くても基本は冷たいものは飲まないようにしましょう。胃腸は室温以下の冷たいものに接することができるような構造になっていません。体内にこもった熱を冷ますには、脇や首、足の付け根などを必要に応じて冷やす方が体温を低下させることの方が効果的です。

 胃を通過すると、強酸の胃液は十二指腸で分泌される重炭酸イオンで中和され、ペプシンは酵素活性を失います。そのあと膵液から分泌されるトリプシンと、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼによりさらに細かいアミノ酸として分解されます。それぞれの酵素は膵液では前駆体として分泌され、そのあと小腸上皮細胞の酵素によって活性化します。カルボキシペプチダーゼにおいては、小腸において活性化したトリプシンによって活性化され、酵素として働きます。

 その後でも小腸上皮細胞でも数種類のプロテアーゼによってタンパク質の分解は進められます。タンパク質が分解された最小単位はアミノ酸です。糖は基本は単糖になって吸収されますが、タンパク質は3つほど繋がったままのトリペプチド(アミノ酸が3つ繋がったタンパク質)のままでも小腸で吸収されます。その後小腸粘膜細胞内でもさらに一定割合分解され、ジペプチド(アミノ酸が2つ繋がったもの)やアミノ酸になります。最終的には75%がアミノ酸として、25%がジペプチドもしくはトリペプチドとして小腸粘膜細胞から肝臓へと続く門脈へと輸送されます。輸送体にはいくつかの種類があり、腸管から上皮細胞へはNa+アミノ酸共輸送体やペプチド輸送体、上皮細胞から門脈側はNa+非依存性アミノ酸共輸送担体を介して吸収されます。

 唯一トリペプチドとして吸収されるものはグルタチオンです。他のペプチドは毛中に入るまでには全てアミノ酸になるのに対してグルタチオンのみトリペプチドのまま血中に入ります。グルタチオンは肝臓でグルタチオン抱合により有毒物質を解毒し、体外への排出を早めます。そして何より高い抗酸化作用を持ちます。肝臓は解毒をつかさどり、酸化ストレスが高い臓器です。吸収されたグルタチオンはまず門脈を介して肝臓に集まるのは肝機能を守るためにとても効率的なシステムと感じます。

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