栄養学:糖質1

 今回は栄養学、ダイエット界隈、何かと話題の糖質について。

 糖質とは何でしょうか。糖質は脂質、タンパク質とともに3代栄養素の一つであり、もっとも速やかにエネルギーとなります。炭素、酸素、水素からなります。糖質と紛らわしい言葉に炭水化物がありますが、厳密には別のものです。炭水化物の定義は食品から脂質・タンパク質・ミネラル・ビタミン・水分をのぞいたものです。一般的にはこの炭水化物に含まれるものは糖質と食物繊維の2種類となります。分解吸収されて人間がエネルギーとして使えるものが糖質、分解できずエネルギーにならないものが食物繊維です。

 

ケミストのたまごさんによるイラストACからのイラスト 

 

 上の図はアミロース、白米やうどん、おいもに含まれるでんぷんと呼ばれる糖質です。自然界に存在する糖質の基本構造はこのように6つの炭素による輪っかが鎖のように繋がっている構造になります。この鎖状のアミロースはこのままでは大きすぎて微細な小腸の網目をくぐり抜けることはできません。そのため、消化管から口腔から唾液アミラーゼ、膵臓から膵アミラーゼなどのアミロースの鎖を切るための酵素が分泌されます。アミロースと食物繊維の違いは人間が持つ消化酵素アミラーゼでこの鎖を切ることができるかできないかです。私たち人間は食物繊維の鎖を切る酵素を持っていないので吸収されずそのためカロリーがないと言われています。

 このアミロースが分解され、最終的に一つだけになったものが”単糖”、その手前、二つ繋がったものが”二糖”、3つから9つ繋がったものが”オリゴ糖”です。アミロースのようなそれ以上に長い鎖は多糖類と呼ばれます。

 まず、最も糖質の基本となる単糖です。単糖は炭素6つが輪っかになったもので糖質の最小単位です。単糖類は3種類;グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースがあります。
 次に、二糖もまた3種類;マルトース、スクロース、ラクトースがあります。マルトースはグルコースが2つつながり、ほとんど甘味はありません。スクロースはフルクトースとグルコースが繋がったもので、別名ショ糖、一般的にいう砂糖のことで、甘味が強いのが特徴です。ラクトースはガラクトースとグルコースでできていて、乳糖と呼ばれます。甘味はショ糖の半分以下で、母乳や牛乳の甘味成分です。

 小腸粘膜には単糖を吸収する輸送体(単糖の運び口)しかありません。そのため、酵素で鎖を少しずつ切っていく必要がありますが、私たちにとって利用しやすいエネルギーとなる単糖は腸内細菌にとっても貴重な栄養源です。特に、腸内環境を悪化させる悪玉菌は単糖をエネルギーとして利用するため私たち人体と取り合いになります。そのためアミラーゼによって二糖類にまで分解された糖質が最終的に単糖にまでなる最後のステップは小腸にあるαグルコシターゼによって行われます。つまり悪玉菌に糖を渡さないようにギリギリまで単糖に変化させない、というわけです。

 糖類は水溶性が強いため脂溶性の細胞膜を単純に通過できません。グルコース、ガラクトースは小腸上皮にあるSGLT1という輸送タンパク(受け渡しの窓口)を介して吸収されます。このとき、糖は必ずナトリウムとともに運ばれます。これがOS1など経口補水液が糖とナトリウムを吸収のため一緒に飲むことを勧める理由です。このSGLT1は下痢などのトラブル時も通常と変わらず働きます。

 フルクトースは例外で、GLUT5という輸送タンパク質を介して小腸に吸収されます。こちらの輸送はナトリウムに依存しません。

 小腸で吸収された単糖は門脈を介してその50%が肝臓にまず回収されます。このときの吸収は輸送体GLUT2を介して行われます(GLUT2の取り込みはインシュリンに依存しない)。肝臓はその重量の8%ものグリコーゲンを貯蔵する一番のクリコーゲン保管庫です(筋肉は1%)。このGLUT2の取り込みは肝臓が脂肪肝や肝硬変、肝炎などの炎症を持つと傷害されるため、そういった肝臓疾患を持つと肝静脈に放出される糖質が増加し、食後の高血糖が顕著になります。肝臓に吸収されたグルコースはインシュリンの作用を得てグリコーゲンとして貯蔵されます。また糖尿病のようなインシュリン作用に障害を持つとグリコーゲン合成促進、糖新生の抑制作用が低下しこちらも食後高血糖になります。

 こうして肝臓に取り込まれなかったグルコースは肝静脈から大循環へ流れ、インスリンの追加分泌によってGLUT4を介して各組織に吸収されます。GLUT4により糖を吸収する組織は骨格筋・心筋・平滑筋・脂肪細胞・白血球・膵島のα細胞などです。GLUT4を解する糖の輸送はインシュリンに依存します。これはインシュリン抵抗性が高いと太りやすくなる理由となります。

 肝静脈に放出されたグルコースを最も多く取り込むのは骨格筋です。その割合は70%ほどと言われています。この割合は適切な運動でさらに増加します。

 筋細胞から取り込まれなかったグルコースが行く先は脂肪細胞です。脂肪細胞は脂肪滴という独特の袋を細胞質に持ち、そこに糖質をトリグリセリドとして貯蔵します。

 血糖のコントロールは一般的に知られている以上に精神的な状態に影響を及ぼします。アメリカで精神疾患の診断に一般に用いられるDSM-5では精神疾患の基準の一つとして糖尿病が挙げられています。ここで何が言いたいか、というと中医学で言われる”肝”の働きと西洋学の”肝臓”の働きの類似点です。中医学の肝は疏泄をつかさどると言われ、消化機能、情志の調整をすると考えられています。

 肝の疏摂機能は必要なものを必要な場所に届けることの調整です。中医学の肝と西洋学の肝臓は認識がことなるところが多いのですが、糖の代謝に関しては一致しています。まず、肝臓が血糖を貯蔵し、その残りを他臓器に分配します。そして、血糖が不足しているときは肝臓がその不足を補うため非常食としての血糖を放出します。まさに疏摂をつかさどる、全体の配分を調整する肝の働きです。血糖に関してはまさに“肝”の働きと”肝臓”の働きは驚くほど一致します。

 そして、血糖コントロールの乱れはまさに情志に影響します。これに関しえてまた次回のお話します。

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