栄養学:糖質2

 糖質、といっても様々な糖があります。

 オリゴ糖、というとお腹に優しいという印象ですが、もう少し詳しく知らないと本質は見えてきません。オリゴ糖の定義は糖質が3から9程度繋がった中程度の長さの糖質です。腸内環境を整えると言われるオリゴ糖はまた特殊なオリゴ糖の一部です。その腸によいオリゴ糖の代表は、人間の母乳に含まれるミルクオリゴ糖と呼ばれるものです。

 ミルクオリゴ糖は単純に人間である私たちがエネルギーとするグルコース、フルクトース、ガラクトースが連なった糖の連なりではありません。そこにはフコースやシアル酸、アセチルグルコサミンなど、さまざまなものが含まれています。そのために消化酵素で分解されず、単純に消化吸収されることなく大腸に運ばれ、次の段階である大腸の栄養素、プロバイオティクスとして働くようになります。

 生まれたての赤ちゃんの腸内環境は無菌のまっさらな状態です。そのまっさらな状態から産道を経てまず、お母さんから有益な菌をもらいます。その大切な菌を育てるのが母乳に含まれるオリゴ糖です。人間の赤ちゃんは体よりも脳の発育を優先しているため、母乳の内容もまた脳への栄養を優先しているそうで、他の母乳動物と比較し糖質多めのアミノ酸少なめといわれています。しかし、その貴重な糖質のなかで20%は赤ちゃんがエネルギーとして利用できないオリゴ糖の形で供給されます。つまり、母乳は赤ちゃんへの栄養として80%、腸内細菌への栄養として20%が含まれています。私たち人間は腸内環境を整えることが生き残り戦略としてかなり大きく占めることがわかります。

 母乳に含まれる残りの80%の糖質は乳糖といわれる状態です。乳糖はグルコースとガラクトースが1:1で繋がったものです。赤ちゃんの腸にはこの乳糖を分解する酵素が存在するのでそれらが腸で分解され栄養素として吸収されます。ガラクトースはまず、腸に吸収され一旦全て肝臓に収容され、グルコースに変換されて体内で利用されます。

 この乳糖(ラクトース)を分解するラクターゼという酵素は日本人に関して言えば成長するのに伴い一般的に活性を失います。乳糖が分解できず、大腸内の浸透圧が上がり、さらに乳糖をガスに変える腸内細菌の活動で牛乳を飲むとお腹がゴロゴロ、ガスがでる、というのは日本人の大人では自然な反応です。牛乳を飲み続けることで乳糖を乳酸や酢酸に変化させる菌が増えてこの腸の不快感が少なくなることはありますが、基本吸収できないことに変わりはないようです。ヨーロッパ人においてはラクターゼ活性が残っていることもあるようですが・・・。

 単糖の中で一番注目なのはフルクトース、これは少し特徴的です。ガラクトースは比較的グルコースの代謝経路をなぞるのに対して、フルクトースは独自の代謝経路を持ちます。フルクトースとは一般的に言われる砂糖のような、甘い糖質のことです。砂糖のような甘味成分はショ糖(スクロース)と呼ばれ、構造としてはグルコースとフルクトースが繋がったものです。

 グルコースは小腸上皮細胞でNaとの共輸送でSGLT1というタンパクを介して吸収されます。SGLTといえば・・・最近糖尿病治療薬で聞き覚えがありますよね。近位尿細管に存在して糖の再吸収をするのがSGLT2で、ここを阻害するのが糖尿病治療薬です。以前リンゴなどの樹皮で用いられた”フロリジン”という成分はかなり初期から糖の再吸収を阻害し、血糖のコントロールを改善すると言われていましたが、このフロリジンの作用点はSGLT1および2両方を阻害します。このフロリジンは尿への再吸収に関わるSGLT2の阻害は血糖コントロールに役に立ちますが、副作用としてSGLT1も阻害するため腸の浸透圧を上げて乳糖同様下痢の原因となり、実用には至らなかったそうです。ただ、現在のSGLT2阻害薬への研究の基になりました。

 話は戻して、フルクトースはグルコースを吸収するタンパクSGLT1とは全く別のGLUT5によって吸収されます。こちらは基本濃度に依存して吸収されます。そして吸収された後、フルコースのグルコースとの一番の違いはまず肝臓で全て回収され、そして中性脂肪へと代謝されることです。肝臓で回収されるフルクトースは体循環に入らず、血糖値を上げない糖質として注目を浴びました。そのため、一時果糖は太らない、などと言われました・・・。

 が、実際のところ果糖は血糖は上げないかもしれませんがの肝臓への負担は実際はかなりのもの、決して健康にいいとおすすめできるものではありません。グルコースが肝臓以外の臓器にも分配して代謝されるところを、果糖は全部肝臓が引き受けます。肝臓が処理するブドウ糖の割合を50%とすると、果糖は100%肝臓で代謝されますから、つまり2倍の負担です。実際、アルコールをほぼ一滴も飲まないのに、甘いものが好きだと肝機能が悪化する例は多いです。

 フルクトースを大量に摂取することでの肝臓への負担は大きくなり様々な健康被害が生まれます。肝臓でのエネルギー代謝がうまくいかないことで尿酸値が上がります。フルクトースの代謝産物は脂肪になるので心臓に負担をかけます。そして肝臓のインシュリン抵抗性を引き上げ、その結果糖尿病のリスクも上がります。肝臓にインシュリン抵抗性があると余分なエネルギーを脂肪細胞に送ることになり肥満を加速します。さらに、フルクトースは老化を引き起こす糖化リスクがグルコースの7倍と言われています。つまり、糖尿のリスクも、がん発生のリスクも、認知症のリスクも跳ね上がります。

 そもそも自然界に果糖はそこまで多くはありません。果実がなる秋を中心に、一定期間摂取できても、それが一年中続くことはあまりありません。そして現代社会では近所のお店で売っているフルーツは自然界のものと比較して品種改良で果糖が豊富になっています。果糖の摂取はこの50年で3倍になっています。

 果糖が肝臓で全て代謝され、体循環に回らない理由は、体が果糖を毒として認識しているから、という説があります。自然界に存在するものがそんなに毒性が?と思われるかもしれませんが、果糖は他の糖類と比較しても依存性が強い特性があります。果糖は植物が種をまくために動物をおびき寄せるためのもの、と考えれば動物の体にいいものでは必ずしもないこともあり得るように感じます。果糖はアルコール同様用法用量を守らなくてはいけないものだと感じます。

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