栄養学:タンパク質2

 タンパク質はアミノ酸がペプチド結合で繋がったものです。タンパク質の分子量は小さいものでも5000ほど、大きいもので10万を超えます。その構造は一次構造(アミノ酸配列)、二次構造(部分的な立体構造)、三次構造(全体的立体構造)、四次構造(プリペプチドの結合)のように幾重にも重なる複雑です。

 タンパク質の一次構造はなかなか変性しませんが、立体構造は熱・酸・アルカリで比較的簡単に壊れます。立体構造が壊れればタンパク質はもとの機能を失います。このことを失活と言います。卵の白身が熱を加えることで透明から白になることです。タンパク質の変性は熱、酸素、アルコールの添加、振とう、重金属、食品添加物や塩の添加、X線照射など様々な原因がきっかけになります。卵の白身の例からわかりますが、この変性は不可逆です。

 タンパク質は体内で様々な役割を果たします。酵素・ホルモン・筋肉のような収縮性タンパク・ホルモンの受容体・輸送タンパク質・免疫抗体のような防御タンパク質・コラーゲンのような構造タンパクが全てタンパク質から作られます。

 体の至る所で必要とされるタンパク質。体重50kgの一般的な体格、生活をしている方が一日に作り出す量は200gと言われています。ところが、国民栄養調査では女性の平均摂取タンパクは約60g。とても200gには及びません。この残り140gをどう補っているか?これはタンパク質の他の栄養素と大きな違い「異化と同化」の特性のためです。タンパク質の異化と同化とはつまりタンパク質で作られたものを壊して、また作り直すリサイクルシステムを採用しています。この異化と同化のバランスがとれていることが健康を維持し、若さを保つ秘訣です。リサイクル資源は燃やせるごみに出しませんよね。体を燃やす、エネルギーを得るための代謝は糖質のような効率のよい栄養素にお任せすることが一つの健康維持戦略です。

 タンパク質の摂取量は年々減少傾向で、20年前の20代の平均が60g、これは20年前の75gよりかなり下がっています。厚生労働省が定めるタンパク質の必要摂取量は基本は体重1kg辺りに対して1.2g、つまり体重50kgであれば60gが必要となります。成長期の若年層、ハードなトレーニングをしている人、妊婦や授乳婦はさらに上がります。データだけを見れば、今日本人女性20代の体重は51.3kgなのでこの必要摂取量はなんとかキープしている、もしくはやや少なめくらいです。ただ、注意しなくてはいけないことはこの必要摂取量にはあまり根拠はありません。以前は上限として体重1kgに対し2g以上は摂取すべきではないとされていますが、腎臓病などがあるケースを除き、タンパク質の過剰摂取が健康障害になったケース報告がないため、現在は上限の制限は設定されていません。

 この必要量の目安は、体重によってもちろん変化します。目安としてはご本人の手のひら2枚分の肉と魚と卵、さらにプラス豆製品をとりましょう。動物性の肉、魚、卵を7に対して植物性の豆製品は3ほど。もちろん摂取量に上限はないので最低限の量がこのくらい、という話です。

 年配の方や女性の方で、植物性の食品を主にでタンパク質をとる方がいますが、これではタンパク同化の効率はあがりません。というのも、必須アミノ酸(私達が自分で作り出せない栄養素)の中の一種類、メチオニンが植物性のタンパク質には不足しています。メチオニンはタンパク合成の開始コドンに含まれますので、これが不足するとタンパク合成は進みません。必須アミノ酸と言われる体内で合成できないアミノ酸は9種類。このどれが不足してもタンパクの異化と同化はうまくいきません。これが動物性タンパク7に対し、植物性を3と言われる理由です。

 タンパクが豊富、と言われる食品は大抵が動物由来なのに対し、豆製品がタンパクが豊富なこと、疑問に思ったことありませんか?植物は基本エネルギーを光合成で得ます。光合成によって得られるものは酸素と糖です。そのため植物はデンプンや果糖のような糖質、食物繊維(吸収ができませんが糖質)を多く含みます。その中でマメ科の植物が実らせる豆からは例外的にタンパク質が多く含まれます。この理由は実はマメ科の植物に寄生する細菌が、タンパク質を作るためなのだそうです(マメ科の生薬・甘草にはタンパクが含まれているそう)。

 牛もそうですね。草ばかり食べていますが、体には脂がしっかりついています(美味しい)。牛もまた内臓に寄生する細菌によって脂肪を作り、それを吸収しエネルギーとするようです。私達は食べたものが身になっていくと言われたりしますが、それは完全ではありません。私達の体は食べたものの影響は大きいことは確かです。ただ、その陰で目に見えない細菌の存在を忘れる訳にはいきません。

 学術的ではないですが、かわいいキャラクターとわかりやすい説明。お客様への説明時に参考にしています。

栄養学:タンパク質1

 タンパク質は英語では”protein”。語源はギリシャ語で第一の、を意味するproteiosに由来します。生体の構成成分として、また代謝物質としてもっとも大切な栄養素としてこのような命名をされたようです。

ガイムさんによる写真ACからの写真 

 タンパク質は私たちの体を作る主要な構成成分で、皮膚、筋肉、臓器などの主材料です。体のハード面を作るイメージが強いですが最近ではホルモン、神経伝達物質、免疫抗体などソフト面も多くがタンパク質が関わっていることが注目されています。

 体の60%が水分でできていると言われますが、タンパク質は15~20%、水分を除いたおよそ半分を占めます。そのタンパク質の吸収と消化について今回は調べて行きたいと思います。

 消化機能の低下で最も吸収が影響を受ける栄養素の一つがタンパク質と言われています。消化吸収力に関わるのは咀嚼力、消化器の括約筋の弱まりによる蠕動運動の低下、胃酸などの消化液の分泌低下です。消化力の低下でもたれ感が出やすくなるのでそもそも摂取量も減少します。

 タンパク質を消化するために必要な酵素は総称してプロテアーゼと呼ばれます。主に胃で分泌されるペプシンと膵臓から分泌されるトリプシン、キモトリプシンです。

 胃壁がどんな構造になっているかご存じでしょうか?胃の噴門部と胃体部には胃液を分泌する胃小窩という穴が存在します。胃小窩の内側にはペプシンの前駆体であるペプシノーゲンを分泌する主細胞と塩酸を分泌する傍細胞があります。この傍細胞からはpHが1から1.5にもなる強塩酸が分泌されます。前駆体であるペプシノーゲンがペプシンへ変わる至適pHは1.5前後ですので、この強塩酸は酵素活性を得るため必須です。また、この強い酸により長い鎖が折りたたまれた形であるタンパク質の立体構造(3次構造)が壊れ、プロテアーゼが作用しやすくなります。立体構造が壊れたタンパク質に対しさらに活性化されたペプシンが今度はタンパク質の長い鎖を切り、ポリペプチド、オリゴペプチドのような短い単位にします。このとき、アミノ酸にまでは分解しません。

 医師からの処方で多い胃酸の分泌を抑える作用が強いH2ブロッカーやプロトンポンプインヒビターと呼ばれる薬。特にプロトンポンプインヒビターは近年では多様が増え、自覚症状である胃の痛み、胸焼けなどの症状をかなり切れ味よく改善してくれます。ただ、もちろんその作用上タンパク質の消化能力は落ちるため、タンパク質不足による貧血などの副作用が生じることがあります。貧血のように、症状が表面化してくればまだよいのですが、タンパク質の利用は多岐にわたるため、潜在的なタンパク質不足の方は貧血症状以上に多いと考えた方が良さそうです。特に、胃腸が弱くて胃薬を服用しているケースでは、その胃腸を作るためのタンパク質が薬によって吸収ができなくなるという悪循環が生じる恐れがあります。胃酸の分泌を抑える胃薬は漠然と使用を続けないで、消化剤の併用など違う形で今の状態を離脱していく糸口を見つけるという視点は持たないといけません。

 同様に、酵素が活性を持つには適正温度があります。そのため、過度な冷飲食も酵素活性を落とし、消化力を悪化させます。暑くても基本は冷たいものは飲まないようにしましょう。胃腸は室温以下の冷たいものに接することができるような構造になっていません。体内にこもった熱を冷ますには、脇や首、足の付け根などを必要に応じて冷やす方が体温を低下させることの方が効果的です。

 胃を通過すると、強酸の胃液は十二指腸で分泌される重炭酸イオンで中和され、ペプシンは酵素活性を失います。そのあと膵液から分泌されるトリプシンと、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼによりさらに細かいアミノ酸として分解されます。それぞれの酵素は膵液では前駆体として分泌され、そのあと小腸上皮細胞の酵素によって活性化します。カルボキシペプチダーゼにおいては、小腸において活性化したトリプシンによって活性化され、酵素として働きます。

 その後でも小腸上皮細胞でも数種類のプロテアーゼによってタンパク質の分解は進められます。タンパク質が分解された最小単位はアミノ酸です。糖は基本は単糖になって吸収されますが、タンパク質は3つほど繋がったままのトリペプチド(アミノ酸が3つ繋がったタンパク質)のままでも小腸で吸収されます。その後小腸粘膜細胞内でもさらに一定割合分解され、ジペプチド(アミノ酸が2つ繋がったもの)やアミノ酸になります。最終的には75%がアミノ酸として、25%がジペプチドもしくはトリペプチドとして小腸粘膜細胞から肝臓へと続く門脈へと輸送されます。輸送体にはいくつかの種類があり、腸管から上皮細胞へはNa+アミノ酸共輸送体やペプチド輸送体、上皮細胞から門脈側はNa+非依存性アミノ酸共輸送担体を介して吸収されます。

 唯一トリペプチドとして吸収されるものはグルタチオンです。他のペプチドは毛中に入るまでには全てアミノ酸になるのに対してグルタチオンのみトリペプチドのまま血中に入ります。グルタチオンは肝臓でグルタチオン抱合により有毒物質を解毒し、体外への排出を早めます。そして何より高い抗酸化作用を持ちます。肝臓は解毒をつかさどり、酸化ストレスが高い臓器です。吸収されたグルタチオンはまず門脈を介して肝臓に集まるのは肝機能を守るためにとても効率的なシステムと感じます。

栄養学:精神科疾患とタンパク質

 日本ほど精神科領域において多剤併用が多い国はないそうです。では他国ではどのような治療をしているのか?実は健康管理の基本の基本、栄養療法をきちんとやることが見直されているそうです。

バカボン君さんによる写真ACからの写真 

 安定した心を作るために必要な栄養素として、最近再注目されているのがタンパク質です。栄養学など勉強していなくても知っている、基本の栄養素です。

 タンパク質は糖質、脂質と並んで三大エネルギーと言われ、3つとも体内でアセチルCoAに変換され、エネルギー代謝経路に入っていきます。

 糖質の代謝(解糖系)では
糖質 → グルコース → グルコース6リン酸 → ピルビン酸 →アセチルCoA
         ↕        ↕
            グリコーゲン    乳酸

 脂質の代謝(β酸化)では
脂質 → 脂肪酸 + グリセロール → アセチルCoA

タンパク質の代謝では
タンパク質→ 糖原性アミノ酸 → ピルビン酸 → アセチルCoA
↘ケト原性アミノ酸 → アセトアセチルCoA↗       

 このように、3代栄養素は結局はアセチルCoA(アミノ酸は他のパターンもありますが)に変換されTCA回路に入り代謝されます。栄養素としては、TCA回路に入ってしまえば3つとも同じエネルギーとなります。

 ただ、冒頭で述べたようにタンパク質は安定した心を作るために必要な栄養素です。もちろん筋肉や皮膚などの材料にもなります。加えて、脂質も同様ホルモンや細胞膜の材料となるため、エネルギー供給はグルコースにお任せして、タンパク質と脂質は本来それにしかできない役割に回ってもらうというのが理想的なエネルギーの供給バランスです。

 そういう点では糖質カットなどの栄養戦略もありますがやはりエネルギーとして活用しやすい糖質は、タンパク質と脂質の有効利用のために適度に摂取する必要があります。

 タンパク質が安定した心の状態を保つと言われる理由はタンパク質を分解したアミノ酸が重要な神経伝達物質の材料となるからです。そしてアミノ酸から神経伝達物質の合成にはさらに多くの種類の栄養素が必要です。特にストレスによって消費されるビタミンB群や女性の鉄欠乏は多くの精神症状の原因となります。

 ここから、アミノ酸が神経伝達物質に変換されるまでの道筋を見てみましょう。

L-グルタミン → L-グルタミン酸 → γ-アミノ酪酸(GABA)
     ナイアシン    ビタミンB6
L-グルタミン酸は学習能力や記憶力アップに
GABAは興奮を静める役割・・・GABA入り食品をとることが神経伝達物質として利用されるかは疑問です。

L-フェニルアラニン → Lーチロシン → L-ドーパ → ドーパミン → ノルアド
  葉酸・ナイアシン・鉄  葉酸・ナイアシン・鉄 VitB6  VitC・銅
ドーパミンはやる気、心地よさを
ノルアドレナリンは意欲を上げて、物事に興味を持たせる

L-トリプトファン → 5-HTP → セロトニン → メラトニン
葉酸・ナイアシン・鉄  VitB6  マグネシウム
セルトニンは安心感を
メラトニンは睡眠状態を

 それぞれの伝達物質に様々な役割があります。薬剤師であれば聞き覚えのある名前ばかりではないでしょうか?それだけに薬に頼る前にそれぞれの栄養素を補い、自らの脳の働きを正常にしておく必要があります。

栄養学:糖質2

 糖質、といっても様々な糖があります。

 オリゴ糖、というとお腹に優しいという印象ですが、もう少し詳しく知らないと本質は見えてきません。オリゴ糖の定義は糖質が3から9程度繋がった中程度の長さの糖質です。腸内環境を整えると言われるオリゴ糖はまた特殊なオリゴ糖の一部です。その腸によいオリゴ糖の代表は、人間の母乳に含まれるミルクオリゴ糖と呼ばれるものです。

 ミルクオリゴ糖は単純に人間である私たちがエネルギーとするグルコース、フルクトース、ガラクトースが連なった糖の連なりではありません。そこにはフコースやシアル酸、アセチルグルコサミンなど、さまざまなものが含まれています。そのために消化酵素で分解されず、単純に消化吸収されることなく大腸に運ばれ、次の段階である大腸の栄養素、プロバイオティクスとして働くようになります。

 生まれたての赤ちゃんの腸内環境は無菌のまっさらな状態です。そのまっさらな状態から産道を経てまず、お母さんから有益な菌をもらいます。その大切な菌を育てるのが母乳に含まれるオリゴ糖です。人間の赤ちゃんは体よりも脳の発育を優先しているため、母乳の内容もまた脳への栄養を優先しているそうで、他の母乳動物と比較し糖質多めのアミノ酸少なめといわれています。しかし、その貴重な糖質のなかで20%は赤ちゃんがエネルギーとして利用できないオリゴ糖の形で供給されます。つまり、母乳は赤ちゃんへの栄養として80%、腸内細菌への栄養として20%が含まれています。私たち人間は腸内環境を整えることが生き残り戦略としてかなり大きく占めることがわかります。

 母乳に含まれる残りの80%の糖質は乳糖といわれる状態です。乳糖はグルコースとガラクトースが1:1で繋がったものです。赤ちゃんの腸にはこの乳糖を分解する酵素が存在するのでそれらが腸で分解され栄養素として吸収されます。ガラクトースはまず、腸に吸収され一旦全て肝臓に収容され、グルコースに変換されて体内で利用されます。

 この乳糖(ラクトース)を分解するラクターゼという酵素は日本人に関して言えば成長するのに伴い一般的に活性を失います。乳糖が分解できず、大腸内の浸透圧が上がり、さらに乳糖をガスに変える腸内細菌の活動で牛乳を飲むとお腹がゴロゴロ、ガスがでる、というのは日本人の大人では自然な反応です。牛乳を飲み続けることで乳糖を乳酸や酢酸に変化させる菌が増えてこの腸の不快感が少なくなることはありますが、基本吸収できないことに変わりはないようです。ヨーロッパ人においてはラクターゼ活性が残っていることもあるようですが・・・。

 単糖の中で一番注目なのはフルクトース、これは少し特徴的です。ガラクトースは比較的グルコースの代謝経路をなぞるのに対して、フルクトースは独自の代謝経路を持ちます。フルクトースとは一般的に言われる砂糖のような、甘い糖質のことです。砂糖のような甘味成分はショ糖(スクロース)と呼ばれ、構造としてはグルコースとフルクトースが繋がったものです。

 グルコースは小腸上皮細胞でNaとの共輸送でSGLT1というタンパクを介して吸収されます。SGLTといえば・・・最近糖尿病治療薬で聞き覚えがありますよね。近位尿細管に存在して糖の再吸収をするのがSGLT2で、ここを阻害するのが糖尿病治療薬です。以前リンゴなどの樹皮で用いられた”フロリジン”という成分はかなり初期から糖の再吸収を阻害し、血糖のコントロールを改善すると言われていましたが、このフロリジンの作用点はSGLT1および2両方を阻害します。このフロリジンは尿への再吸収に関わるSGLT2の阻害は血糖コントロールに役に立ちますが、副作用としてSGLT1も阻害するため腸の浸透圧を上げて乳糖同様下痢の原因となり、実用には至らなかったそうです。ただ、現在のSGLT2阻害薬への研究の基になりました。

 話は戻して、フルクトースはグルコースを吸収するタンパクSGLT1とは全く別のGLUT5によって吸収されます。こちらは基本濃度に依存して吸収されます。そして吸収された後、フルコースのグルコースとの一番の違いはまず肝臓で全て回収され、そして中性脂肪へと代謝されることです。肝臓で回収されるフルクトースは体循環に入らず、血糖値を上げない糖質として注目を浴びました。そのため、一時果糖は太らない、などと言われました・・・。

 が、実際のところ果糖は血糖は上げないかもしれませんがの肝臓への負担は実際はかなりのもの、決して健康にいいとおすすめできるものではありません。グルコースが肝臓以外の臓器にも分配して代謝されるところを、果糖は全部肝臓が引き受けます。肝臓が処理するブドウ糖の割合を50%とすると、果糖は100%肝臓で代謝されますから、つまり2倍の負担です。実際、アルコールをほぼ一滴も飲まないのに、甘いものが好きだと肝機能が悪化する例は多いです。

 フルクトースを大量に摂取することでの肝臓への負担は大きくなり様々な健康被害が生まれます。肝臓でのエネルギー代謝がうまくいかないことで尿酸値が上がります。フルクトースの代謝産物は脂肪になるので心臓に負担をかけます。そして肝臓のインシュリン抵抗性を引き上げ、その結果糖尿病のリスクも上がります。肝臓にインシュリン抵抗性があると余分なエネルギーを脂肪細胞に送ることになり肥満を加速します。さらに、フルクトースは老化を引き起こす糖化リスクがグルコースの7倍と言われています。つまり、糖尿のリスクも、がん発生のリスクも、認知症のリスクも跳ね上がります。

 そもそも自然界に果糖はそこまで多くはありません。果実がなる秋を中心に、一定期間摂取できても、それが一年中続くことはあまりありません。そして現代社会では近所のお店で売っているフルーツは自然界のものと比較して品種改良で果糖が豊富になっています。果糖の摂取はこの50年で3倍になっています。

 果糖が肝臓で全て代謝され、体循環に回らない理由は、体が果糖を毒として認識しているから、という説があります。自然界に存在するものがそんなに毒性が?と思われるかもしれませんが、果糖は他の糖類と比較しても依存性が強い特性があります。果糖は植物が種をまくために動物をおびき寄せるためのもの、と考えれば動物の体にいいものでは必ずしもないこともあり得るように感じます。果糖はアルコール同様用法用量を守らなくてはいけないものだと感じます。

栄養学:糖質1

 今回は栄養学、ダイエット界隈、何かと話題の糖質について。

 糖質とは何でしょうか。糖質は脂質、タンパク質とともに3代栄養素の一つであり、もっとも速やかにエネルギーとなります。炭素、酸素、水素からなります。糖質と紛らわしい言葉に炭水化物がありますが、厳密には別のものです。炭水化物の定義は食品から脂質・タンパク質・ミネラル・ビタミン・水分をのぞいたものです。一般的にはこの炭水化物に含まれるものは糖質と食物繊維の2種類となります。分解吸収されて人間がエネルギーとして使えるものが糖質、分解できずエネルギーにならないものが食物繊維です。

 

ケミストのたまごさんによるイラストACからのイラスト 

 

 上の図はアミロース、白米やうどん、おいもに含まれるでんぷんと呼ばれる糖質です。自然界に存在する糖質の基本構造はこのように6つの炭素による輪っかが鎖のように繋がっている構造になります。この鎖状のアミロースはこのままでは大きすぎて微細な小腸の網目をくぐり抜けることはできません。そのため、消化管から口腔から唾液アミラーゼ、膵臓から膵アミラーゼなどのアミロースの鎖を切るための酵素が分泌されます。アミロースと食物繊維の違いは人間が持つ消化酵素アミラーゼでこの鎖を切ることができるかできないかです。私たち人間は食物繊維の鎖を切る酵素を持っていないので吸収されずそのためカロリーがないと言われています。

 このアミロースが分解され、最終的に一つだけになったものが”単糖”、その手前、二つ繋がったものが”二糖”、3つから9つ繋がったものが”オリゴ糖”です。アミロースのようなそれ以上に長い鎖は多糖類と呼ばれます。

 まず、最も糖質の基本となる単糖です。単糖は炭素6つが輪っかになったもので糖質の最小単位です。単糖類は3種類;グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースがあります。
 次に、二糖もまた3種類;マルトース、スクロース、ラクトースがあります。マルトースはグルコースが2つつながり、ほとんど甘味はありません。スクロースはフルクトースとグルコースが繋がったもので、別名ショ糖、一般的にいう砂糖のことで、甘味が強いのが特徴です。ラクトースはガラクトースとグルコースでできていて、乳糖と呼ばれます。甘味はショ糖の半分以下で、母乳や牛乳の甘味成分です。

 小腸粘膜には単糖を吸収する輸送体(単糖の運び口)しかありません。そのため、酵素で鎖を少しずつ切っていく必要がありますが、私たちにとって利用しやすいエネルギーとなる単糖は腸内細菌にとっても貴重な栄養源です。特に、腸内環境を悪化させる悪玉菌は単糖をエネルギーとして利用するため私たち人体と取り合いになります。そのためアミラーゼによって二糖類にまで分解された糖質が最終的に単糖にまでなる最後のステップは小腸にあるαグルコシターゼによって行われます。つまり悪玉菌に糖を渡さないようにギリギリまで単糖に変化させない、というわけです。

 糖類は水溶性が強いため脂溶性の細胞膜を単純に通過できません。グルコース、ガラクトースは小腸上皮にあるSGLT1という輸送タンパク(受け渡しの窓口)を介して吸収されます。このとき、糖は必ずナトリウムとともに運ばれます。これがOS1など経口補水液が糖とナトリウムを吸収のため一緒に飲むことを勧める理由です。このSGLT1は下痢などのトラブル時も通常と変わらず働きます。

 フルクトースは例外で、GLUT5という輸送タンパク質を介して小腸に吸収されます。こちらの輸送はナトリウムに依存しません。

 小腸で吸収された単糖は門脈を介してその50%が肝臓にまず回収されます。このときの吸収は輸送体GLUT2を介して行われます(GLUT2の取り込みはインシュリンに依存しない)。肝臓はその重量の8%ものグリコーゲンを貯蔵する一番のクリコーゲン保管庫です(筋肉は1%)。このGLUT2の取り込みは肝臓が脂肪肝や肝硬変、肝炎などの炎症を持つと傷害されるため、そういった肝臓疾患を持つと肝静脈に放出される糖質が増加し、食後の高血糖が顕著になります。肝臓に吸収されたグルコースはインシュリンの作用を得てグリコーゲンとして貯蔵されます。また糖尿病のようなインシュリン作用に障害を持つとグリコーゲン合成促進、糖新生の抑制作用が低下しこちらも食後高血糖になります。

 こうして肝臓に取り込まれなかったグルコースは肝静脈から大循環へ流れ、インスリンの追加分泌によってGLUT4を介して各組織に吸収されます。GLUT4により糖を吸収する組織は骨格筋・心筋・平滑筋・脂肪細胞・白血球・膵島のα細胞などです。GLUT4を解する糖の輸送はインシュリンに依存します。これはインシュリン抵抗性が高いと太りやすくなる理由となります。

 肝静脈に放出されたグルコースを最も多く取り込むのは骨格筋です。その割合は70%ほどと言われています。この割合は適切な運動でさらに増加します。

 筋細胞から取り込まれなかったグルコースが行く先は脂肪細胞です。脂肪細胞は脂肪滴という独特の袋を細胞質に持ち、そこに糖質をトリグリセリドとして貯蔵します。

 血糖のコントロールは一般的に知られている以上に精神的な状態に影響を及ぼします。アメリカで精神疾患の診断に一般に用いられるDSM-5では精神疾患の基準の一つとして糖尿病が挙げられています。ここで何が言いたいか、というと中医学で言われる”肝”の働きと西洋学の”肝臓”の働きの類似点です。中医学の肝は疏泄をつかさどると言われ、消化機能、情志の調整をすると考えられています。

 肝の疏摂機能は必要なものを必要な場所に届けることの調整です。中医学の肝と西洋学の肝臓は認識がことなるところが多いのですが、糖の代謝に関しては一致しています。まず、肝臓が血糖を貯蔵し、その残りを他臓器に分配します。そして、血糖が不足しているときは肝臓がその不足を補うため非常食としての血糖を放出します。まさに疏摂をつかさどる、全体の配分を調整する肝の働きです。血糖に関してはまさに“肝”の働きと”肝臓”の働きは驚くほど一致します。

 そして、血糖コントロールの乱れはまさに情志に影響します。これに関しえてまた次回のお話します。

栄養学:コレステロール3部作 完結編

コレステロールについて書き続けてきましたが、ではそのコレステロールとうまく付き合うために薬剤師としてどんなアイテムが使えるかをお話します。

 

まず、コレステロールを作るのも回収するのも肝臓の役目です。肝で代謝を受けるのは悪玉、善玉の両方そして食事由来の中性脂肪です。そのため脂質の代謝をスムーズにするためには肝の炎症(脂肪肝)を改善することは最優先事項です。

 

まず肝の炎症で使用する第一選択は田七製剤です。田七はウコギ科サンシチニンジンの根を加工したもので、一般にいう人参であるウコギ科オタネニンジンとは別種。金不換とも呼ばれますが、金でさえ換えたくないほど値打ちがあると言われました。効能としては化瘀止痛、活血止痛。血液の流れを改善し、なおかつ漏れ出た血液をとめる、痛みをとめる効果があります。

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K.M=KARIBITOさんによる写真ACからの写真

田七人参ではないですが、同じウコギ科コシアブラです。

 

薬剤師をしているとあれ?と思うのではないでしょうか。血液の流れをよくする薬といえば副作用は出血傾向。ところがこの田七は血管内の血液の流れは改善し、漏れ出た血液はとめる、という効果があります。ですので打撲、捻挫などの内出血を治すことは得意中の得意。諸葛孔明も怪我をした兵士に田七を使用したとか。

 

この田七製剤はさまざまな製薬メーカーからでているのですが、脂肪の炎症を鎮める、肝機能改善効果があります。止血効果と比較すると即効性としては弱いですが、継続する服用で肝機能数値はもちろん、それにともないコレステロール値、中性脂肪の数値も大きく変わります。お酒を飲む習慣がある人はぜひ継続して飲んで欲しいアイテムです。

 

もう一つ、肝の炎症を鎮めるためにおすすめしたい栄養素があります。それはEPA、イコサペントです。イコサペントは肝に限らず全身いたるところの炎症を鎮めてくれます。その理由はEPAは炎症を抑制するプロスタグランジン3系の反応を加速させるためです。この抗炎症作用はリーキガット症候群のような腸の炎症でも、花粉症のような鼻粘膜の炎症でも、アトピーのような皮膚の炎症でも効果があります。肝機能トラブルに限らず、炎症体質の人の根本的な体質改善にはかかせない栄養素です。

 

肝臓の炎症を鎮めるとこれだけコレステロールは大切、悪玉コレステロールは悪くない、と言っておきながら総コレステロール値が下がることがあります。どんな検査値でも言えることですが、検査値は高値にする要素を低値にする要素の引っ張り合いです。例えばLDLコレステロールの数値について。肝臓の代謝が悪いとLDLは上がり気味に、それに加えてコレステロールをつくる脂質が不足しているとLDLは下がり気味に。この2つの条件が同時に起きると、LDLの数値は正常範囲内になることがあります。脂肪の炎症をとると、検査値をあげる要素がなくなるためごまかしがきかず、エネルギー不足の低値が明るみにでてきます。このような肝機能のトラブルとエネルギー不足の問題を併せ持っているケースに炎症を改善しながらも脂溶性のエネルギーの補給になるEPAはぴったりです。

 

最近スーパーなどでもω3の油が市販されいて、だいぶ認知もされてきたかと思います。EPAもω3系の油ですが、日本人の場合市販のω3系の油からEPAを合成する酵素はあまり強くないようです。それもそのはず、EPAは魚の油、魚を常食する日本人にとって長いあいだ合成する必要はなかったからです。市販のω3ももちろん良い商品ですが、炎症を鎮める、という目的ではEPAを直接取るほうが圧倒的に効率が良いでしょう。

 

多くのメーカーが販売しているEPA製剤ですが、品質は様々。魚由来の油なのでこだわるならあまり大きな魚は生物濃縮が心配で避けたほうがいいですね。まな板にのるくらいのサイズの魚が適当なようです。サプリが手っ取り早いですが、魚食をかなり中心にできるならそれでもOKです。

 

また、LDLコレステロールの酸化を防ぐために“還元2号方”という処方もおすすめです。この処方は腎臓の血流量を増やすので肝臓疾患より腎臓疾患で進めることが多いですが、末梢血管での抗酸化力が優れているのだとか。血圧降下作用も期待できるため動脈硬化をはじめとして、循環器系のイベントのリスクが高い方にはとても優れた方剤です。

 

逆に数値が低い、というケースにはサメの肝油成分がおすすめです。この肝油成分は短い代謝経路でコレステロールとして変換されるためコレステロール不足の即効性が高くあります。さらにその下流のホルモンを作り出してくれますので、アトピーなどの皮膚症状、不妊骨粗鬆症など改善の効果が期待できます。

 

思いつく限りで私のコレステロール対策はこの4つが柱となります。

栄養学:コレステロール3部作 問題編

動脈硬化のリスクを上げると言われるコレステロール。しかし、体内で重要な役割もたくさん担っています。 悪玉と言われるからといって単純に量を減らしてしまうと細胞に必要な栄養が行き届かず、何らかの不調の原因となります。

 

 実はコレステロールに悪玉、善玉のような種類があるわけではありません。

 

コレステロールは油に近い性質を持つため水に溶けません。そのため血液中を滞りなく流れるためには“乳化”という特別な状態をとるようになります。乳化とは油と水になじみやすい部分をもつ分子によって油成分が水に溶け込めるようになることです。

 

乳化に必要なのは細胞膜の材料になるリン脂質やタンパク質です。リン脂質やタンパク質は油と仲がいい親油基と、水と仲がいい親水基を持っています。この親油基を内側に、親水基を外側にして、複数のリン脂質でコレステロールのような油性ものを包み込みひとつの球体を作ります。そうして球体自体は水に溶けますが、内側に油性の物質を抱え込むことができるようになります。これがコレステロールが血中にとける理由です。同じ仕組みで、中性脂肪脂溶性のビタミンもこの乳化によって血中に溶けて、運ばれていきます。

 

このリン脂質とタンパク質でできた球体にのってコレステロールは運ばれていきます。このコレステロールを乗せた球体のなかで、体の細胞隅々にコレステロールを運び、受け渡しをするものが悪玉コレステロールと呼ばれます。また、同じくコレステロールを乗せた球体の中でも末梢の余っているコレステロールを回収するものが善玉コレステロールと呼ばれます。

 

繰り返しますが、末梢にコレステロールを運ぶからと言って悪玉コレステロールが悪いわけではありません。コレステロールはその抹消の細胞で必要な栄養だからです。問題はその末梢に届けられたコレステロールが何かのきっかけで本来の役割と外れたものに変性をしてしまうことです。

 

コレステロールを本来の役割を失わせ、さらに動脈硬化の原因とまでしてしまうきっかけ。それはコレステロールの“酸化”と“糖化”です。

 

酸化とはカラダのサビ、と説明されます。通常は細菌感染や初期のがん細胞など、私たちの健康を害する原因を除去するために必要なものですが、この酸化が必要以上に強く働いてしまうと正常な細胞にも傷をつけます。この酸化ストレスが引き起こすカラダの不調はわかっているだけでも、シミやシワ、うつ病アルツハイマー認知症、そして心疾患や動脈硬化です。

 

加えて、悪玉コテステロールに関しては“糖化”も気にしなくてはいけません。先ほどコレステロールはリン脂質とタンパク質で作られた乗り物に乗って運ばれる、とお話しました。“糖化”とはこの乗り物の構成成分であるタンパク質と血液中の糖質が結びついて、タンパク質が正常に機能しなくなることです。乗り物が壊れたコレステロールもまた、動脈硬化の原因となる悪玉なのです。

 

このコレステロールの酸化と糖化による悪玉化を防ぐため、私たちにできることを考えていきましょう。

 

まず酸化を避けること。過度の飲酒と喫煙は避けましょう。喫煙は特に控えるべきです。タバコを吸うことにより、顕著な酸化ストレスが発生し、それがコレステロールの酸化につながります。喫煙により血管疾患のリスクが高まるのはこの理由です。

 

酸化ストレスは環境の変化など、心理的なストレスが高まった時にも発生します。なるべくのんびりと、余裕をもてる状態を保つことも大切です。

 

酸化ストレスを打ち消す方法もあります。それはビタミンCやビタミンEなど、抗酸化作用をもつ栄養素をしっかりとること。

 

尿酸値の高値も要注意です。コレステロールが私たちの体に大切な役割を持つように、尿酸もまた役割があります。それは自前の抗酸化物質になるということです。ビタミンCやEなどを作り出すことができない私たちの体は酸化ストレスに対して尿酸で対応します。この尿酸が高い、ということは体内で酸化がおきているひとつの目安となります。尿酸そのものにコレステロールの酸化を促す効果はありませんが、尿酸が高いということは酸化ストレスが強くなっているひとつの指標として参考になります。

 

次に糖化ストレスについて。糖質はタンパク質と結びついてそのタンパク質を本来の役割ができないものにしてしまいます。この糖化は動脈硬化不妊や、認知症骨粗鬆症の原因にもなります。

 

糖化ストレスを防ぐためには、もちろん糖質の食べ過ぎを防ぐことです。コレステロールの高値だけなら大丈夫ですが、血糖値の高さも同時に指摘を受けていたら危険です。甘いものは避け、丼もの麺モノなど糖質の多い食事も避けたほうがいいでしょう。

 

また、肥満も注意が必要になります。肥満とは脂肪細胞が余分な糖質を食べ過ぎて膨らんだ状態になったこと。脂肪細胞は脂肪をため込むもの、と思われがちですが実はこちらも他に役割があります。それは代謝に関係するホルモンを分泌する、ということです。脂肪細胞が脂肪を蓄えて膨らむと、コレステロールの糖化を促すホルモンが多く分泌されるため、より動脈硬化が進行します。そのため、肥満体型、特に内臓脂肪が多い方はやはり少しダイエットの必要があります。

 

ちなみに、コレステロールは悪玉コレステロール(LDL)として140mg/dl以上が脂質異常症と診断を受けます。しかし、実際総コレステロールにして200~220mg/dlの人と180mg/dl未満の人を比較して死亡率、ガンの発生率ともに後者が高いというデータが取れられているようです。

 

以上よりコレステロールは量より質が大切であることが言えます。

 

栄養学:コレステロール3部作 役割編

悪者とされがちなコレステロールですが、最近だいぶ風向きが変わってきたかと思います。今日はコレステロールについてノートをまとめていこうと思います。

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以前は高脂血症と言われましたが、今は脂質異常症、と呼ばれています。血中の脂質が多いことにより、動脈硬化、特に冠疾患の危険因子が高い病態のことを指します。

 

高脂血症脂質異常症と呼び方は変わりましたね、ポイントは以前は悪玉と呼ばれるLDLコレステロール中性脂肪の高さを問題視していたのが、最近では善玉のHDLコレステロールの低さが重要視されてきたためかと思います。“高”脂血症という呼び名が適切ではなくなったからですね。

 

脂質異常症の診断基準はこちらです。

 

以前は脂質代謝異常症の人への栄養指導は脂質、特にコレステロールを多く含む食品を制限するように伝えていました。例えば、卵、ししゃも、レバーや魚卵です。動物性食品の脂を多く含む部分にコレステロールは多く含まれます。

 

ところが最近では血中のコレステロールは外因性より内因性のものが多いと知られてきていますね。つまり、食事由来より、自分自身の肝臓から作り出すものの方が影響が多いのです。そのため、食品に含まれるコレステロールはあまりうるさくいわれなくなってきました…卵は1日に何個食べてもOKです。

 

コレステロールといえば悪者のイメージが強いですよね。そもそもなぜ肝臓はコレステロールを作っているのでしょうか?

 

大切なこととして、基本私たちの体は私たち自身に害があるものは作り出しません。これはコレステロールも例外ではありません(回を分けますが尿酸についてもおはなしします!)。

 

コレステロールは実は生体のエネルギーに加え、多くの内分泌ホルモンのを材料となります。これは他の物質では代わりになりません。コレステロールを材料にして合成されるホルモンは以下の通り。

 

コレステロールは体内のいたるところに存在して内分泌を調整しています。代表はステロイドホルモン。ステロイドホルモンは抗ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾール、ミネラルをコントロールするアルドステロン、男性ホルモンのアンドロゲンや女性ホルモンのエストロゲンになります。

 

体内至る所で必要としているからこそ、血中内にコレステロールが必要なのです。

 

不妊治療の分野でコレステロールは大変注目を浴びています。コレステロールは女性ホルモンの材料ですよね。実際コレステロールが低い女性は不妊になりやすいというデータがあります。生殖産業ではコレステロールは高値より低値の方が問題となるのです。

 

また、コエンザイムQ10も聞いたことはあるのではないでしょうか。老化を防ぐ抗酸化物質です。意識高そうなサプリに入っている印象ですが、本来ならこれも自分で代謝して作り出せるものです。

 

単純にコレステロールが高いからと言って、これを下げてしまうと…どうなるか。これら全ての内分泌ホルモンの供給が途絶えてしまいます。

 

実際コレステロールは少し高めの方が余命が長いというデータがあります。

 

なぜここまでコレステロールは悪者となったのでしょうか?それはコレステロール動脈硬化の原因としての主犯格である疑いがかかったからです。

 

血管の動脈硬化に関してコレステロールは無関係ではありません。ただ、コレステロールが悪さをするには、コレステロールだけの責任ではないのです。1人では悪さはしないけれど、仲間がいると素行が悪くなる中学生のように、コレステロールが悪者になる過程にはまた他の条件が必要となるのです。そしてその条件、真犯人の取り締まりの方がコレステロールよりよっぽど重要です。これは次回に続けます。

 

栄養学:ビタミンDについて

過剰投与が心配されるのであまりサプリメントでおすすめすることが少ないビタミンD。他のビタミン類、CやB群と比較すると効能が今ひとつ地味?なのか影が薄いですが、最近かなり見直されてきています。

 

ビタミンDの効果として一番有名なものはカルシウムとリンの吸収を促進すること。実際保険適応で処方されるビタミンD骨粗鬆症の予防目的がほとんどです。

 

代謝への影響が中心と考えられていたビタミンDですが、最近見直されてきています。まず免疫力の強化作用。日常的に日光浴をする人がそうでない人より圧倒的に免疫力が高いことから調査は勧められました。その結果、その他にも、血糖調整機能や、妊娠の成功、精神疾患にも関わっていることが知られるようになりました。

 

ビタミンDは生体で生合成されたものと食品由来のものに分かれます。

 

ビタミンDとはビタミンD2とビタミンD3の総称。ビタミンD2は植物、主にきのこに存在し、ビタミンD3は動物性の食品に多く含まれます。

 

ビタミンD2とビタミンD3は生体内でほぼ同じように代謝され、活性を持ちます。そのため特に区別なく扱われます。

 

食品由来のビタミンDは他の油性ビタミンとともにカイロミクロンにとりこまれてリンパを介して吸収、全身をめぐります。

 

ビタミンDは小腸や腎臓でのカルシウムとリンの吸収を促進します。甲状腺から分泌されるカルシトニンと副甲状腺ホルモンのPTHと競合してカルシウムやリンの濃度を一定に保ちます。

 

この他に、最近注目をあびているのが小腸粘膜上皮細胞へ、細胞の成熟を促進するという点。ビタミンDが欠乏しているラットでは絨毛の長さが70%程度にしか伸びないという報告がされています。また小腸粘膜細胞同士を繋げるノリの役割をタイトジャンクションも、ビタミンDがその生合成にかかわっている、ビタミンDが不足していると粘膜の面積が少なくなり栄養の吸収にとって不利になる上に、栄養素と有害物質をこし分けるというフィルターとしての機能も落ちてしまうということです。

 

腸の粘膜を強化する、という点では免疫の「陰」の側面を充実させるということですが、ビタミンDは「陽」にもアプローチをするようです。ω3の油の話と通じますが、ビタミンDは過剰な免疫にブレーキをかけるTreg細胞への誘導を促進し、炎症を促進するTh17細胞への分化を抑制します。

 

実際アレルギー性鼻炎アトピーを罹患している小児はビタミンDの血液中濃度が低い傾向にあるようです。

 

ビタミンDの最新の研究で興味深いのは妊娠率と高い相関関係があるという報告です。ビタミンDが体内に豊富な女性は欠乏している女性より妊娠確率が1.5倍も高いのです。そして、妊娠のしやすさをはかる卵巣予備能(AMH)、体外受精の成功率、習慣性流産のリスクなどさまざまなデータでビタミンDが豊富な女性のほうが妊娠出産に有利であるという結果が出ています。

 

これはひとつに、腸内粘膜を正常化するように子宮内膜の状態を改善する効果があるため、と思われます。

 

それに加え、ビタミンDは最近核内レセプターが発見されホルモンの一種と考えられるようになりました。この核内におけるレセプターとの反応を介して、NK細胞の分化増殖を調整するようです。習慣性流産原因としてNK細胞の割合の高さも指摘されているため、ビタミンDが婦人科で注目を集めています。

 

NK細胞はウィルス細胞や癌化した細胞の細胞死を誘導します。ビタミンDレセプターが関与して悪性細胞の成長をコントロールし、そのため将来的にはガンの治療にも注目を浴びています。

 

この、悪性細胞の細胞死と、正常な細胞の文化促進効果は神経変性疾患、例えば自閉症うつ病アルツハイマー統合失調症にも効果をあげることを期待されています。実際ビタミンD投与による小児の自閉症評価尺度による研究で優位に改善が見られいています。

 

ビタミンDは体内のコレステロール代謝産物から、日光を浴び、肝臓で代謝され、さらに腎臓で代謝されやっと活性型となります。この活性型ビタミンD3は厳密に体内で調整されているので過剰症の心配はまずないと言われていますが、活性型ビタミンD3自体をサプリメントでとらなければそのリスクはまずないと言われています。過剰症の目安として1日IU4000もしくは100μgと言われています。これは人間が全裸で1日中太陽に当たったときに作られるビタミンDの最大量だとか。

 

医薬品によるビタミンDはロカルトロールが活性型ビタミンで、濃度に注意が必要ですが、骨粗鬆症に使われるワンアルファは肝臓での代謝によって活性型になるので、肝機能がトラブルなければ安全に使えるこちらがオススメ。動物性の魚などを原料としたビタミンD製剤では肝臓と腎臓両方で代謝が必要なたまこちらも過剰症の心配はほぼありえません。

 

デヒドロコレステロール+光→プレビタミンD3+熱→ビタミンD3+肝代謝→25(OH)ビタミンD3+腎代謝→活性型ビタミンD

 

つまりサプリや食品からのビタミンD摂取は光に当たる過程を飛ばすだけです。とはいえ、この数十年で光にあたる、なんて考えられなくなった人も多いかと思いますので、サプリでの補給は当たり前かもしれません。

 

また、感染症予防の面からも注目を浴びています。これまで寒暖差による体力の低下や空気が乾燥することによりウィルスの増殖が増えるなどが冬に風邪を引きやすくなる理由と言われることが多かったようです。しかし、ビタミンDが関与していることで、風は気温や空気の乾燥ではなく、その生成に必要となる紫外線が届かないことが直接的な原因ではないかとの指摘がされています。

 

知ってるようでしらない、ビタミンDの細かなお話でした。

栄養学:ω3系の油の話

私たち人間のご先祖はサルだといわれていますが、なぜ人間は他のサル達と進化の道を分かれたのでしょうか?そのきっかけは、水辺で暮らしていたためだと言われています。水辺のサル達が多く食べていたのは魚。魚に含まれる油が、同じく油を主成分とする私たちの脳を目覚ましく発達させたのです。油の選択はなんと種の運命まで左右するのです。

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油は体内で様々な役割を担っています。まずエネルギー源として。次に細胞の構造を支える膜として。各種ホルモンや、胆汁酸などの材料として。さらに脂溶性のビタミンの運び屋として。そして最後に、炎症の発生、抑制をコントロールする生理活性物質としてです。

 

今、特に注目をあびているのは最後にご紹介した、炎症反応の調整役としての油役割です。炎症とはカラダに悪い影響を与える刺激に対して生体が兼ね備えた防御システムです。例えば虫に刺されると、赤くなったり、腫れたりします。これは体内に入った毒を排除しようと免疫システムが作動した結果に起きるものです。例えれば、体内の火事を消防団が急いで消火活動をしに集まって来てくれる、その一連の騒動です。炎症を抑える薬もありますが、火が沈下していないまま消防団を無理やり帰してしまうようなもので、長期的な目で見ればカラダに負担がかかります。そして、これとは逆に火が消えても消防団が帰らず消火活動をし続けることがあります。このから騒ぎがアレルギー症状です。アレルギーとは、しかるべきタイミングで発動し、適切なタイミングで収束する必要がある炎症反応がいつまでも長引いてしまう状態です。これが花粉症やアトピーなどの正体です。

 

この炎症反応を適切なタイミングでとめるブレーキ役になってくれるのは先ほどサルのお話で登場した魚の油EPADHAなどのω3(オメガスリー)と言われる油です。このω3系の油は正式にはω3系不飽和脂肪酸と呼ばれ、炭素鎖に二重結合を複数持ちます。最初の2重結合がメチル基より3番目にあるためω3。私たちの体内で有効に使われるω3の油は、α-リノレン酸EPADHAの3種類が主です。

 

それぞれの特性として

α-リノレン酸

  • 動脈硬化抑制
  • 高血圧予防
  • アレルギー症状改善
  • ガンの抑制
  • (摂り過ぎで)軟便・下痢

EPA

  • 脳卒中の予防
  • 高血圧予防
  • 動脈硬化抑制
  • 脂質異常症予防
  • アレルギー症状改善
  • 炎症性疾患の改善
  • (摂り過ぎで)易出血・げっぷ・吐き気

DHA

このω3系の油は体内で作り出せない必須脂肪酸ですが、α-リノレン酸を摂取していればα-リノレン酸EPADHAと作り変えることができるようです。

 

ちなみにα-リノレン酸は亜麻仁オイル、エゴマ油、シソ油です。EPAといえばエパデール(イコサペントサンエチル)です。噛んでみるとわかりますが本気で魚臭い!DHAも同様。そのため調味料として売られているのはα-リノレン酸だけになります。ロトリガはEPADHAが配合されてます。

 

ω3系の油に対して、ω6系の油もあります。こちらはコーン油、紅花油、ごま油など、一番身近な油に多く含まれ、代表的なものはリノール酸です。必須脂肪酸のため、食事から摂取する必要があります。

 

このリノール酸は体内でアラキドン酸に変換されます。炎症反応にかかせないアラキドン酸カスケードです。ω6系もまた不足すると免疫力の低下や肝機能障害など不調の原因となるため必要ですが、現代人は圧倒的にとりすぎで、火消しがから騒ぎ状態。過剰摂取は動脈硬化、高血圧、脂肪肝やアレルギーの原因になりますので要注意です、

 

ω3系とω6系を比較し、どちらがいい油、ということもなくどちらも必要です。ただ、体内の脂質のバランスはどちらにも偏らないようにしたほうがいいようですね。ω3:ω6=1:3~4と言われているようですが、私は1:1くらいでいいのではないかと思っています。というのも江戸時代以前の日本人の油を割合がそのくらいだったという説があるようなので。

 

リノール酸は炎症に関係するプロスタグランジン系を2つまたぎます。

 

リノール酸→アラキドン酸→炎症反応

  ↓

γリノレン酸

  ↓

炎症抑制

 

そしてω3系のαリノレン酸も下のような反応をします。

 

αリノレン酸EPA→炎症抑制

 

面白いのは、世界的にも特に魚食の文化を持つ日本人ではリノール酸→γリノレン酸

とαリノレン酸EPAの変換酵素は弱いとか。つまり炎症を抑えたければEPAを直接とるべし、ということです。しみじみと日本文化での魚の存在の大きさを感じます。

 

ω9系の油、オリーブオイルもありますが、これは体内で合成できるようなのでとってもいいしとらなくてもいいと言われていますね。ω3~9まで、全て不飽和脂肪酸なので酸化のリスクがあるのですが、中でω9系だけ熱につよいという特性があります。加熱料理には使いやすいですね。

 

もう一つ、油のお話で私が好きなのはイベリコ豚の話です。イベリコ豚はどんぐりを与えられて育ちます。雑食のイベリコ豚はどんぐりの油をそのまま自分自身の脂肪へとたくわえます。これがなんともいえない旨みを出すようです。

 

逆に、食事に油はほとんど含まれていない草食の牛はどうでしょう?牛の油は食事ではなく、腸内細菌が作り出します。つまり牛の油は腸内細菌近次第。松坂牛がビールを飲んで油をつけるという話を聞いたことがありますが、確かにビールが油になるのではなく、腸内細菌に影響を与えるということかもしれません。

 

私たちも雑食です。食べたもので自分自身のカラダができていきます。

 

それを如実に表しすぎてほぅ・・・と思ったのは産前産後の妊婦さんにEPADHAを与えた、という実験。先ほどお話したように私たちは雑食なので食べた油がそのまま身に付きます。そして母乳にも移行します。

 

この実験ではω3系の油をとり続けた母親の子供の学習能力はそうでない母親の子供と比較し優位に高いという結果が出ました。

 

油は私たち人間の種の運命を変えてきました。そして、その影響は過去のことではないと思わされる結果です。