中医学: 弁証論治と八綱弁証

東洋医学では患者の病態の診断、治療に“弁証論治”というものが用いられます。今日は弁証論治とその弁証法の1つである八綱弁証についてお話しします。

 

弁証、の「証」とはあかし。治療の根拠となるカラダの症状を指します。これは西洋医学の例えば収縮期血圧が180以上なら高血圧、のような診断基準ではなく、カラダが表現している状態、顔色、脈の状態、声の調子、問診によって得られた情報全てが「証」となります。血圧などの検査値も、証の1つ扱われますが、その検査値一つで診断が下されるということはまずありません。

 

この証を頼りに病態を明らかにしていくことが”弁証”です。

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そして”論治”とはその弁証に基づき論理的に治療を組み立てていくことです。

 

弁証には後でお話しする八綱弁証の他にも、気血弁証、臓腑弁証、経絡弁証、六経弁証、気血営血弁証などがあり、患者の状態に応じて適したものを使います。どんなふうに使う弁証法を選ぶの?と言われると困ってしまいますが・・・これは経験でしか学ばないと思います。自分で言って耳が痛いのですが、どの弁証法を使っているかはっきりしないまま何となく薬を選ぶ、というのが1番治療効果がでないやり方ですのでしっかり学ばないといけません。

 

「葛根湯証」という言葉を聞いたことがある方多いのではないでしょうか?これは「方証相対」という方剤と証は一対一の対応関係にある、という考えを基にしています。一般的に汗が出ていなくて、熱があって寒気や頭痛、肩こりがある体力が比較的ある、というのが葛根湯証と言われます。この方証相対の考えは方剤を選ぶためにとても便利ですが、これが全てではないことは覚えておかないといけません。弁証では患者の病態を振り分けて方剤を選ぶだけではなく、きちんと患者の中で気血、臓腑がどんな働きをして影響しあっているのかを分析する必要があります。。そのような詳細な観察力があってこそ風邪薬として使われる葛根湯が皮膚炎や乳腺炎に応用できるようになるからです。

 

では、弁証論治の基本である八綱弁証についてお話ししていきましょう。八綱弁証は陰陽論をベースとして、陰⇆陽の1次元的な分析を多次元的なものに発展させた分析法です。具体的には表裏・感熱・虚実・陰陽の指標を用いて症状を分析します。

 

表裏に関しては病邪がカラダのどこに位置しているかを分析します。一般的に東洋医学ではカラダは層構造になっていて、その外側体表を“表”、内側を“裏”と捉えます。具体的には風邪などの病気の初期、悪寒など体表の症状が強い時は表、下痢や腹部膨満感など、内側の症状が強い時に裏と判断します。ただ、表裏だけではなくどこに病症が現れているのかはカラダの左右、上下など含めて観察する必要があります。

 

次は寒熱。寒熱を分析するにあたって気をつける必要があることは「結果として熱を持っているのか(熱象)」か「病因として熱なのか(熱証)」を意識してわけるて観察することです。八綱弁証は現象を捉える方法なのでここで診断するのは熱象、今の状態です。もう一点大切なことは、八綱弁証はカラダの全体ではなく局所的な症状にフォーカスを置くことです。カラダ全体の寒熱を意識することも大切ですが、まず病象がおきている局所注目しないと、結局何でも寒熱錯雑(寒熱が混ざっていること)に分類され、分析の切れ味がなくなります。

 

寒熱を弁証するにあたって、より立体的な分析となるように燥湿も押さえておきましょう。乾いた状態の熱象と湿気を持つ熱象ではアプローチが全く異なります。

 

次は虚実です。「虚」は何かが不足している状態、「実」は本来ないはずのものがある、もしくは必要以上に何かがあり過ぎる状態です。

 

例えば感染病の場合は明らかな病邪が存在するため“実”と捉えます。ストレスが溜まり過ぎる状態を気が多すぎる(気滞)と捉えますが、これもまた実です。虚とは不足の状態ですから体力がない、やせ細っている、色艶が悪いなど何らかの虚弱を示唆します。注意点は、例えば熱などの一見「実」に見える病態において、実しているとは限らないということです。熱は陽気ですので、対になる陰気とのバランスが大切です。この冷やすための陰が不足することにより相対的に熱が過剰になった状態を熱がありなおかつ虚した状態、虚熱証といいます。

 

虚実、というと体力がある人が実、ない人が虚という捉え方をする人がいます。それはそれで間違いではないかと思いますが、虚実の全てではありません。その分析が全身的か、局所的かを意識して使い分ける、または全身と局所の状態を結びつけて考える弁証をしないと東洋医学の特質は失われると思います。全身的な虚だけをみて何かを補うようなアプローチは西洋医学の対症療法と何も変わりはありません。

 

八綱弁証の最後は陰陽、という視点です。この陰陽はよく表裏・寒熱・虚実の3つのまとめとして扱われることが多いようですが、もう一歩深く学びましょう。八鋼弁証の陰陽はこれまでの分析に含まれない点を分析する、と考えていいと思います。「まとめ」、というより「その他」という感じ。

 

例えば皮膚の乾燥が見られ津液の不足が考えられるとき、代表方剤である六味丸が適応となることがあります。六味丸は津液を増やして解消する処方で、陰に働きかけます。一方、同様の皮膚の乾燥で八味丸が適応となる病態があります。八味丸は六味丸をベースとし、同じく津液を増やす効果があります。しかし八味丸の適応は乾燥に加えて、体内の津液を動かす力、陽気が不足している病態です。同じ皮膚の乾燥でも一方では隠に、もう一方では陰と陽両方に働きかけを行います。このような病態の全体を通して表裏・寒熱・虚実では分析しきれない生体の動態に向き合う時陰陽というモノサシが用いられます。

 

思ったよりカンタンには説明できなかったですね…でも基本の弁証ですのでしっかりマスターして下さい。

 

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