栄養学:ω3系の油の話

私たち人間のご先祖はサルだといわれていますが、なぜ人間は他のサル達と進化の道を分かれたのでしょうか?そのきっかけは、水辺で暮らしていたためだと言われています。水辺のサル達が多く食べていたのは魚。魚に含まれる油が、同じく油を主成分とする私たちの脳を目覚ましく発達させたのです。油の選択はなんと種の運命まで左右するのです。

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油は体内で様々な役割を担っています。まずエネルギー源として。次に細胞の構造を支える膜として。各種ホルモンや、胆汁酸などの材料として。さらに脂溶性のビタミンの運び屋として。そして最後に、炎症の発生、抑制をコントロールする生理活性物質としてです。

 

今、特に注目をあびているのは最後にご紹介した、炎症反応の調整役としての油役割です。炎症とはカラダに悪い影響を与える刺激に対して生体が兼ね備えた防御システムです。例えば虫に刺されると、赤くなったり、腫れたりします。これは体内に入った毒を排除しようと免疫システムが作動した結果に起きるものです。例えれば、体内の火事を消防団が急いで消火活動をしに集まって来てくれる、その一連の騒動です。炎症を抑える薬もありますが、火が沈下していないまま消防団を無理やり帰してしまうようなもので、長期的な目で見ればカラダに負担がかかります。そして、これとは逆に火が消えても消防団が帰らず消火活動をし続けることがあります。このから騒ぎがアレルギー症状です。アレルギーとは、しかるべきタイミングで発動し、適切なタイミングで収束する必要がある炎症反応がいつまでも長引いてしまう状態です。これが花粉症やアトピーなどの正体です。

 

この炎症反応を適切なタイミングでとめるブレーキ役になってくれるのは先ほどサルのお話で登場した魚の油EPADHAなどのω3(オメガスリー)と言われる油です。このω3系の油は正式にはω3系不飽和脂肪酸と呼ばれ、炭素鎖に二重結合を複数持ちます。最初の2重結合がメチル基より3番目にあるためω3。私たちの体内で有効に使われるω3の油は、α-リノレン酸EPADHAの3種類が主です。

 

それぞれの特性として

α-リノレン酸

  • 動脈硬化抑制
  • 高血圧予防
  • アレルギー症状改善
  • ガンの抑制
  • (摂り過ぎで)軟便・下痢

EPA

  • 脳卒中の予防
  • 高血圧予防
  • 動脈硬化抑制
  • 脂質異常症予防
  • アレルギー症状改善
  • 炎症性疾患の改善
  • (摂り過ぎで)易出血・げっぷ・吐き気

DHA

このω3系の油は体内で作り出せない必須脂肪酸ですが、α-リノレン酸を摂取していればα-リノレン酸EPADHAと作り変えることができるようです。

 

ちなみにα-リノレン酸は亜麻仁オイル、エゴマ油、シソ油です。EPAといえばエパデール(イコサペントサンエチル)です。噛んでみるとわかりますが本気で魚臭い!DHAも同様。そのため調味料として売られているのはα-リノレン酸だけになります。ロトリガはEPADHAが配合されてます。

 

ω3系の油に対して、ω6系の油もあります。こちらはコーン油、紅花油、ごま油など、一番身近な油に多く含まれ、代表的なものはリノール酸です。必須脂肪酸のため、食事から摂取する必要があります。

 

このリノール酸は体内でアラキドン酸に変換されます。炎症反応にかかせないアラキドン酸カスケードです。ω6系もまた不足すると免疫力の低下や肝機能障害など不調の原因となるため必要ですが、現代人は圧倒的にとりすぎで、火消しがから騒ぎ状態。過剰摂取は動脈硬化、高血圧、脂肪肝やアレルギーの原因になりますので要注意です、

 

ω3系とω6系を比較し、どちらがいい油、ということもなくどちらも必要です。ただ、体内の脂質のバランスはどちらにも偏らないようにしたほうがいいようですね。ω3:ω6=1:3~4と言われているようですが、私は1:1くらいでいいのではないかと思っています。というのも江戸時代以前の日本人の油を割合がそのくらいだったという説があるようなので。

 

リノール酸は炎症に関係するプロスタグランジン系を2つまたぎます。

 

リノール酸→アラキドン酸→炎症反応

  ↓

γリノレン酸

  ↓

炎症抑制

 

そしてω3系のαリノレン酸も下のような反応をします。

 

αリノレン酸EPA→炎症抑制

 

面白いのは、世界的にも特に魚食の文化を持つ日本人ではリノール酸→γリノレン酸

とαリノレン酸EPAの変換酵素は弱いとか。つまり炎症を抑えたければEPAを直接とるべし、ということです。しみじみと日本文化での魚の存在の大きさを感じます。

 

ω9系の油、オリーブオイルもありますが、これは体内で合成できるようなのでとってもいいしとらなくてもいいと言われていますね。ω3~9まで、全て不飽和脂肪酸なので酸化のリスクがあるのですが、中でω9系だけ熱につよいという特性があります。加熱料理には使いやすいですね。

 

もう一つ、油のお話で私が好きなのはイベリコ豚の話です。イベリコ豚はどんぐりを与えられて育ちます。雑食のイベリコ豚はどんぐりの油をそのまま自分自身の脂肪へとたくわえます。これがなんともいえない旨みを出すようです。

 

逆に、食事に油はほとんど含まれていない草食の牛はどうでしょう?牛の油は食事ではなく、腸内細菌が作り出します。つまり牛の油は腸内細菌近次第。松坂牛がビールを飲んで油をつけるという話を聞いたことがありますが、確かにビールが油になるのではなく、腸内細菌に影響を与えるということかもしれません。

 

私たちも雑食です。食べたもので自分自身のカラダができていきます。

 

それを如実に表しすぎてほぅ・・・と思ったのは産前産後の妊婦さんにEPADHAを与えた、という実験。先ほどお話したように私たちは雑食なので食べた油がそのまま身に付きます。そして母乳にも移行します。

 

この実験ではω3系の油をとり続けた母親の子供の学習能力はそうでない母親の子供と比較し優位に高いという結果が出ました。

 

油は私たち人間の種の運命を変えてきました。そして、その影響は過去のことではないと思わされる結果です。

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