中医学:漢方薬の剤型について

今日は少し手軽な話題で、漢方薬の剤型についてです。

 

ミステリアスなイメージが強い漢方薬。あまり詳しくない人でも煎じ薬(せんじぐすり)など、聞いたことがあるのではないでしょうか。

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toyaさんによる写真ACからの写真

 

葛根湯や大健中湯など、語尾に“湯”がつく方剤(複数の生薬が決められた割合で調合された配合剤のこと。古典にのっている 約束処方)は一番身近ではないでしょうか。この

“湯”で終わる薬が多くの人の思い描くイメージの中の漢方、煎じ薬です。

 

漢方薬は方剤によって原則として決められた種類の生薬が決められた量、割合で配合されます。生薬には動物性のもの、植物性のものさまざまありますが、自然界でとれたものをそのまま使うことはなかなかできません。これらの生薬は“炮製”といわれる加工を施されます。この炮製の理由は生薬を長期品質を劣化させずに保管するためであったり、有効成分をより効果的に抽出させるためであったり、毒性の軽減、場合によっては薬性まで変化させることがあります。

 

炮製の過程はおもに2つ;修治と炮炙でです

 

漢方の世界で“刻み”というと煎じ薬のことですが、煎じ薬に使われる生薬を見たことがあるでしょうか。そう、だいたい扱いやすいように細かく刻まれ、ウッドチップのようになっています。修治とはこの生薬を調剤しやすく、また次の段階の炮炙で扱いやすいように形を整えることです。薬学博士でいらっしゃる田畑隆一郎先生はご自身の栽培された黄耆について「彫り上げるのにゴボウのようにいかず苦労し、また刻むときにも実にねっとりとして苦労する。生薬は上物はおしなべて個性豊かで、処理に手間がかかることが多い。」とおっしゃっています。この過程が修治ですね。田畑先生のお話は店頭で働く薬剤師にとって忘れがちな、植物の生命力を頂いている実感を感じられ、敵わないなとつくづく思います。ちなみに、黄耆のようにこの修治のみで次の段階炮炙を必要としない生薬も多くあります。

 

 次の段階、炮炙。炮炮の目的は主に2つ;毒性の緩和と成分の有効に活用です。

 

炮炙の代表としては附子を強い火で加熱したり(炮附子)、半夏を生姜と煮る(製半夏)など。これは毒性の軽減、副作用の防止になります。

 

薬効の変化としては例えば朝鮮人参。直接日光にさらした生晒参、蒸したあとさらしたものは紅参と呼ばれ、この炮炙によって薬効が強化されます。それに対し、外皮をきれいにのぞいたあとそのまま乾燥させたものは白参とよばれ、薬効は劣りますが、平性(温めも冷ましもしない)となり、温性の強い紅参とは別の病態に対応ができます。

 

あと、面白いところでこの炮炙の仕方で、作用部位の誘導(引経)を調整することができます。例えば黄柏・知母を塩で炒めれば腎によく効き、柴胡を酢で炒めると肝によく効くようになります。

 

ここまででやっと生薬が調合に使われる準備が整います。

 

先ほど例にあげました葛根湯。この“湯”で始まる薬はもともとは煎じ薬と呼ばれ、作り方は方剤をお湯にいれて20~30分、もとの水分が半分位になるまで煮詰めるものです。

 

これに対して、加味逍遥散のような“散”で終わるような薬。散剤、粉薬ですね。こちらは生薬を細かく潰して粉のようにし、それをそのまま用います。散には“散らす”の意味がありますので、病気を散らす、にかかっているそうです。

 

そして最後に丸剤。あまり目にすることはないかと思いますが…八味地黄丸や六味丸が代表です。生薬を散剤のように粉状にし、それをハチミツなどで練ってお団子状にするのが伝統的なつくり方です。八味地黄丸も六味丸も、構成生薬に山薬が入っています。山薬とは山芋のこと。先ほどの田畑先生によるとやはり山薬も上物で丸剤を作るとうまい具合に結合剤として使えるそうです。

 

即効性が欲しければ“湯”、持続した薬効を望む時に“丸“、“散”はちょうどその中間だそうです。丸剤で用いる生薬を湯や散にしても効くことは効くそうですが、やはり治療効果として今一つとか。確かに八味丸も六味丸も適応症状は長期投与の慢性疾患が多いように感じます。

 

 直接生薬を口に入れる散と丸に対し、煮汁を飲む湯。だいたい散や丸と同じ程度の効果を出そうとすると湯剤の方が4倍ほど多くの生薬が必要になるとか。コストの面でも、急性期は湯剤、慢性期は散・丸というのは理にかなっています。

 

煎じ薬は風情があっていいですが、なかなか毎日30分煮詰めてそれから仕事に行く、というのは大変です。そんなわけで今の主流はエキス剤ですね。これは煎じ薬として煮詰めたものを乾燥させ、乳糖などを添加したもの。煎じ薬がドリップコーヒーならエキス剤はインスタントコーヒーといったところです。こういうと身近に感じられると思いますが、ドリップコーヒーの方が味も香りもつよく、眠れなくなるカフェインの効果をインスタントコーヒーよりずっと感じられると思います。同様に煎じ薬もエキス剤より効果は強いと考えられます。

 

エキス剤のように扱いが簡単で、煎じ薬のように効果が強いものがいいですよね。あります。例えばウチダ製薬が販売している原末製剤は散剤の考えで生薬をそのまま砕いて粉にしたものを製品化しています。漢方も毎日飲むとなると添加物が気になりますが、その点を全部クリアしています。

 

他に、フリーズドライ製法を取り入れている東洋薬効。こちらは生薬を凍らせて水分を飛ばし、粉にしています。こちらも余分な添加物が少なく効果も実感が早いです。

 

粉ではありませんが、花粉症の時期にお世話になりました一元製薬の錠剤シリーズ。こちらも生薬の粉をそのまま固めたもので、値段もリーズナブル、粉ではないので飲みやすいです。

 

ここにあげた3つは製薬メーカーがかなり気合をいれて作り、生薬そのままの効能を出す工夫をしています。お客さんにオススメしても効果が実感しやすいです。剤型一つでも本当に深いです。

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