中医学:心の役割

先日“五行の関係“という記事を書かせていただきました。その中では世界は5つの異なる性質をもつ要素が組み合わさり、お互い協力したり、牽制したりしてバランスをとっています。その5つの要素が自然界では“木火土金水”です。この五行の関係を私たちの体にあてはまります。今回は生体内の火にあたる“心”の働きをお話したいと思います。

 

自然界においての“火”は照らすものすべてを温める太陽のことです。私たち生命は太陽の存在なくては生きてはいけません。同様に生体内での“心”も、「君主の官」といわれ、重要な役割を果たしています。

 

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TeraAyaさんによる写真ACからの写真

 

東洋医学では心の役割、性質としてまず4つの項目を上げています。

  1. 心は血脈をつかさどる
  2. 心は神明をつかさどる
  3. 心の華は顔
  4. 心は舌に開竅し、その液は汗

1つずつ説明をしていきましょう。

 

まず、「心は血脈をつかさどる」。中医学では血が順調に流れるために3つの要素が必要であると考えています。その3つが血・脈・気です。

 

血脈の流れに関して、まず血そのものがなければ話が始まりません。そして脈、というのは血の通り道、血管がきちんと張り巡らされていることも大切です。血と脈だけではチューブに入った水と一緒ですから、流れません。そこに一方向の流れを与えるのが気の力です。

 

血液の量が少なければ、正常な流れはできません。脈が細くなったり、弱くなったりしても血の流れは滞ります。そして血を流す気の力が弱くても血はきちんと流れません。

 

この3つをコントロールするのが心の気です。この心気が弱くなると脈が弱くなる、動悸、不整脈や心臓部の痛みを生じたりします。

 

心は流すことだけではなく、血の生成にも深く関与しています。血の材料は飲食物から得られた津液と肺からとりこまれた営気です。この2つをただ混ぜ合わせただけでは血になりません。おもしろい比喩をしていた方がいます。「砂糖と醤油を混ぜただけでは砂糖と醤油を混ぜたものにしかならないが、そこに火をかけるとタレになる。」心の血の生成に対する関与はまさにこの“火”の役割です。熱はものを変化させる“化物”の力があります。西洋的な考えのなかではタンパク質などの変性や、酵素による反応などのことかと思います。この役割を火の象徴である心が担い、心の力によって透明な津液が赤い血に変わると考えられています。

 

次は“心は神明をつかさどる”の記述です。神とは意識や思考、精神活動のことです。心はこの神を働きが正常に行われるようにコントロールをします。

 

神が正常である時人は、物事を冷静に考え、気持ちを落ち着け、はっきりした意識を持ち、物事に適切な反応ができます。

 

ところが心に問題があり、神がきちんと制御できていないと、不眠や中途覚醒が多くなり、そわそわし、意識が朦朧として、物事に反応できなくなります。

 

血脈と神明を分けて説明しましたが、もちろんこの2つも深く関わり合っています。血脈の流れが悪くなれば不眠や心煩など精神状態に影響を与えますし、逆にストレスがかかるようなことがあれば血のながれも悪くなります。

 

この心が受け持つ神明は私たちの意識(内側)だけではなく、その意識の結果怒った行動(外側)まで含めます。パンの香りをかいて美味しそうだな、と思う(内側)の変化からそのパンを手に取る(実際の行動)までが神の働きです。2度寝をしてしまった、ビールが毎日やめられないなどの行動も、心による神明のコントロールが弱っているためです。

 

次に“心の華は顔”という記述に関して。「心の状態は顔に現れる」ということです。中医学を勉強しなくても、顔色で元気がないのかな?と心配することはありますよね。

 

心と脈の関係は先程お話ししました。全ての脈は心とつながっていて、中を通る血のコントロールをするのが心です。その血脈が1番密に通っているのが顔です。そして顔は体の中でも皮膚がとても薄く、そのため血脈の様子がとても観察しやすいのです。

 

心が健康であれば顔は艶があってほどよい赤みがさしています。艶がなく、白い顔は気や血が不足した状態です。白より、青の入った顔色の悪さは血の流れの悪さを示唆します。

 

また、心は神明、意識をコントロールします。当たり前のことですが驚いたり、がっかりしたり、強いストレスがかかったりするなどの神の動きは心が支配する顔に現れます。

 

次に「心は舌に開竅し、その液は汗」について。生体を五行学説で読み解くとき、肝心脾肺腎の5つの臓器が相互に関連しあっているとお話ししましたよね。その五臓はそれぞれ体のの5つの穴と深い関係があると考えられています。心に関して、その穴は舌である、というわけです。

 

舌は穴なのか?という議論もあるのですが…心の様子は口腔内に現れる、ということです。そのため舌だけでなく口腔や口唇も含め観察することが大切です。舌もまた、顔と同様に血脈がたくさん流れています。そして皮膚よりさらにうすい粘膜で覆われているため、血脈の観察が詳細に行うことができます。

 

舌の中でも舌先は特に心の経脈と繋がりが深くあります。舌先が赤くなっていると心に熱がこもっている、左右にゆがんでいると中風(脳卒中脳梗塞)の恐れがあると考えます。

 

体液の中で、心と深い関わりがあるのは汗だと言われています。中医学では汗を「津液が陽気を受けて、玄府(汗腺)から外に出たもの」と考えます。この陽気が心の気です。夏の暑い時、運動をした時、汗をかきます。このとき、津液とともに陽気も外に逃がすことで体が熱くなりすぎることを回避し、体温を調整するような仕組みになっています。

 

心が正常に機能しているときは適度に汗が出、不必要には出さない。逆に、心が弱っているときは汗が止まらなくなるなどのトラブルが起きることがあります。

 

汗は津液によって作られます。そして、血も津液から作られます。このことを「汗血同源」といいます。汗のかきすぎは津液の不足を招きます。その結果、材料を同じにする血も不足することがあります。東洋医学では汗法といって汗を出すことで邪気を追い払う治療法がありますが、この汗法を用いるときは津液の不足だけでなく、血の不足もないか十分に注意を払う必要があります。同様に気が不足している場合も、汗法では陽気も流れ出てしまうため禁忌となります。

 

心は他の臓器をまとめるリーダーのような存在です。自然界でいえば太陽、と説明しましたが、心はまさに太陽のように少し高い次元から他の臓器の働きを調整します。そのため、顔や舌など他の臓器の様子も現れるようなパーツが心と深い関わりを持っています。

 

簡単ではありますが、五臓の心の役割、今日はここまで。

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