中医学:五味調和

五行学説は中医学の基本です。五行学説とは木火土金水という5つの要素に当てはめ、それぞれが協調し合い、場合によっては牽制し合って自然の仕組みが成り立っていると捉える考え方です。

そして中医学ではこの五行学説を人の体にも当てはめ、5つの要素、木火土金水を肝心脾肺腎と捉えて同様にそれぞれが影響しあいながら成り立つとして様々な病気の治療を展開します。

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中医学では味も同様に5つに分類し、それぞれの味が肝心脾肺腎の臓腑に与える影響をとても大切にしています。これが薬膳のベースの考え方となります。

医食同源”との言葉があります。これは食は治療の基本であり、食を切り離した治療などありえないという考えです。だからこそ本場中国では食べることを大切にし、薬膳の考えは生活に密着しているため、日頃の食事でもたくさんの生薬を用います。

今日はこの薬膳の基本となる考え“五味調和”についてお話しします。

五味調和は五行学説を元に、味を5つに分類し、同じような味を持つ食品は同じような効能をもち、それぞれの味がバランスを保つことで人の健康を作り上げると考えたものです。その5つの味とは酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味(塩味)です。

この五味はそれぞれ食することで守る臓器があります。その対応がこのようになります。

  • 酸味→肝
  • 苦味→心
  • 甘味→脾
  • 辛味→肺
  • 鹹味→腎

酸味のあるものを食べると肝が元気になる、苦味のあるものを食べると心が元気になる、ということです。

例えば苦味のある食べ物ゴーヤは夏が旬ですね。このゴーヤのような食べ物は余分な熱をとるため、熱しやすく、また暑さに弱い心を元気にしてくれます。また、秋に旬のさつまいもや栗など、自然の甘みは脾を労わり、消化の力を助けてくれます。まさに食欲の秋ですね。

一つ一つの味を少し詳しく見ていきましょう。

まず肝を保護する“酸味”。酸味の特徴は主に3つ;収斂固渋、生津と安蛔です。

収斂固渋は体から漏れ出るものを押さえる、引き締める効果です。発汗や下痢、出血などの病的な浸出液の流出を止める作用です。そして生津は津液を生み出すこと。津液不足の陰虚証に用いられます。最後に、安蛔は蛔虫の動きを止める作用です。酸味は駆虫薬として用いられることがあります。”能く収め、能く生じる”という酸味の作用は津液などの体に必要なものだけではなく、邪気に対しても働きます(恋邪)。そのため実邪の証には注意が必要です。

次は心を保護する“苦み”について。苦みは燥湿、泄降と開胃です。

燥湿作用は湿をよく乾燥させる作用です。泄降は下に下ろして排泄するという意味。上昇に上った熱を引き下ろす、上逆した気を引き下ろす、停滞した大便を排泄する作用などです。また少量の苦みは胃の働きを高めます。苦みの特性は”能く燥し、能く降ろす”と言われます。燥性が強いので陰虚証など乾いた状態には注意して用いなくてはいけません。

続いて、脾を保護する”甘味”です。甘味は滋補、緩和と潤燥作用を持ちます。

甘味は気を補い、血を滋養します。そのため補気補血薬は大抵甘い飲みやすい味となります。甘味はゆるめる作用があります。安心作用のように気持ちを緩めたり、緩気止痛作用のように痛みを緩めたり。また甘草に代表されるように諸薬の調和を務めます。また、苦みと逆で乾燥を潤す作用があります。甘味は”能く補い、能く緩め、能く潤す”と言われています。この潤す作用は膩性といわれ、湿気を助長し脾胃の機能を損害しやすいため、湿証には注意が必要です。

次いで、肺を保護する”辛味”。辛味は発散作用と行気作用を持ちます。

発散作用は風邪薬によく用いられる肌表にとりついた外邪を発汗などで取り除くことです。行気作用は気を巡らせる、そして間接的に血も巡らせる効果があります。一部の薬剤(麝香など)は芳香性が強く、邪を除き心神を安定させる開竅作があります。辛味は”能く散じ、能く巡らす”と言われますが、行気、活血は気血を消耗しやすいので注意が必要です。

そして最後に、腎を保護する”鹹味”。聞き慣れない言葉ですが鹹味とは塩味。といっても塩辛ければいいわけではなく、ミネラル豊富な天然塩のことです。鹹味の作用は軟堅、導下、補腎です。

軟堅作用は堅くなったものを柔らかくする作用です。例えばしつこい便秘や堅い瘀血を柔らかくして流し出します。導下作用は下に降ろす作用で、大便の瀉下作用や平肝熄風薬(肝陽を下に降ろす)ことができます。補腎作用は腎陽腎精を補う作用です。鹹味は”能く軟らかくし、能く下ろす”と言われます。

またこの五味は引経の役割も果たすことがあります。例えば六味丸のように腎に働かせたい薬を飲むときは塩水で鹹味を聞かせて飲んでいたとか。

この飲み方も現代ではあまり勧められないようです。それもそのはず、塩水で薬を服用などしたら塩分のとりすぎで血圧が心配ですよね。一般に塩、というと精製された塩分、いわゆるNaClのみの物質のことですが、ミネラルとはその吸収、体内での働きに関して他のミネラルとの関わりをとても大切にします。例えば一方のミネラルが多すぎると他のミネラルが吸収されない、もしくは排泄が多くなってしまうとか。中医学で言う鹹味はにがりなど、いろいろなミネラル分が多く含まれた自然塩です。小さなことですが、塩分もおざなりに選ばずやはり天然由来のものが体に優しいようです。

このように、五味にはそれぞれ特徴があり、そしてそれぞれ対応する臓腑を初めとする体の働きに寄与すると中医学では考えています。

では、どこかが悪ければ、その場所を守るある特定の味ばかり食べていればいいか?というともちろんそんなわけではありません。

五行の表を見ていただくとわかるように、とりすぎると悪い影響を与えてしまう味と臓腑もあります。

  • 酸味⇨脾
  • 苦味⇨肺
  • 甘味⇨腎
  • 辛味⇨肝
  • 鹹味⇨心

これは例えば酸味のあるものをとりすぎると脾を痛める、苦味のあるものをとりすぎると肺を痛める、という関係です。具体的には鹹味である塩分をとりすぎると高血圧となり心に負担をかけますし、辛味であるアルコールをとりすぎると、肝の働きを押さえ込んでしまいます。

五行学説の相克の関係と同じですね。

バランスのよい食事、というと野菜や肉の量や、油や糖の量の話だと思いますよね。単一の味で調理する、ということはないにしてもやはり自分の好みの味に偏りがちです。なるべく意識して、5つの味が食卓にのぼるようにしたいもの。特に小さいお子さんは甘味ばかりが好きだったり、男性は酸味と苦みがあまり箸にとらなかったり、偏りはどでがちですよね。一緒に暮らすご家族の体調管理のためにも、食材の味も少し考慮に入れてみてください。

中医学:四逆散

昨日は月経周期と漢方薬のお話をしました。月経周期だけではなく、私たちの体はさまざまなシグナルを送りあって絶妙な連携をとりながら正常に機能します。その連携をスムーズに進めるのが肝の疏泄作用です。

 

四逆散の名前は“四肢厥逆”から 。手足に気血が通わず冷えがある状態です。全身が冷えているわけではなく、体幹部はむしろほてるのに、手足は冷たいという状態が四逆散の典型症状です。よく、外は冷たくても中は暖かい魔法瓶のような人、という表現をすることがあります。この火照りと冷えの偏りを大きくかき回してとるのが四逆散で、方剤としては似た名前ですが陽虚の四逆湯や血虚寒滞の当帰四逆湯とは全く内容が異なりますので注意しましょう。

 

効能は疏肝理脾.清熱通鬱、主治は肝鬱脾滞.熱厥です。

 

構成生薬はシンプルに4味。

  • 柴胡 6g
  • 枳実 6g
  • 芍薬 6g
  • 炙甘草 6g

 

まず四逆散が適応となる肝鬱症状とはどんなものでしょうか。肝気が鬱滞することで気の流れが乱れて、手足に陽気が流れず、冷えが現れます。また、両脇、胃幹部、腹部、時に頭部に痛みが生じます。気滞による痛みは脹痛感(突っ張った、張った感じ)があり、どこが痛むのか具体的にはわからない、さらにイライラするなど、情緒の影響で悪化します。また陽気が体内で滞っているため、イライラしやすく、熱感がこもります。

 

また肝鬱状態は少なからず脾に影響を与えます。脾が吸収した精を昇清し、それを肝の疏泄でさらに全身に巡らせるため、肝脾の連携ができていないと脾胃の運化機能が落ちて食欲不振や下痢、あるいは便秘の症状が現れやすくなります。簡単に言えばストレスが強くて食欲が落ちる、緊張して下痢になるという状態です。

 

熱がこもるので舌は赤、苔は黄色。脈は緊張した状態を示す弦脈となります。これが四逆散が目標となる肝鬱脾滞の適応症状です。

 

 構成する生薬のうち、柴胡が主薬です。柴胡は肝鬱治療の代表生薬で、気を上昇させる、外側に発散させる効能があります。

 

この柴胡によって昇った気を下に降ろすのが枳実の役割です。これにより一昇一降の気の流れができます。

 

枳実はミカン科酸橙の幼果。気をめぐる作用は一般的にいう行気よりも強い気作用があり、柴胡とともに力強く気を巡らせる。

 

一方、方々に散らせる柴胡ともう一つペアになるのが収斂の芍薬です。柴胡は気を巡らせますが、強い風のイメージと同じで乾燥を招きます。その柴胡の燥性を和らげるのが芍薬です。  

 

『柴胡は肝陰を盗む』、と言われているため柴胡を含む方剤は芍薬を合してバランスを保ちます。

 

四逆散は外側は寒く、中は暑い魔法瓶のような熱の偏りを上から下へ、下から上へ、内から外へ、外から中へと熱の偏りをかき回す処方です。

 

四逆散は方剤中に芍薬甘草湯が含まれます。これも大切なポイントで、気血の滞りによる、筋のこわばりにはよく効きます。同様に筋肉がつぱったような痛みには全般的によく効果があり、場合によっては生理痛などにも効果があります。

 

肝鬱傾向であれば四逆散は第一選択であってもおかしくないですが、気血は虚している状態で動かすと逆にひどい消耗になります。臨床では逍遥散や補中益気湯のように、隠陽の不足に配慮しながら気を動かす必要があります。

 

しかし、肝鬱の処方として四逆散は抑えておくと応用の効く方剤の一つです。

 

 

中医学:月経周期と漢方薬

生理の不調といえば生理痛。最近では副作用も少なく、効果の高い痛み止めが出回るようになりました。

 

ただ、残念ながら月経の根本的な苦痛が減ったかというとそんなに単純ではなさそうです。日常的なストレスや、冷たい飲食物、運動不足や低栄養など、様々な原因で女性の体調不良は一昔前より回復が悪いケースが多く、また痛みだけではなく病態も複雑化しているのだとか。

 

月経は子供を授かるための体の準備です。命をつなぐ妊娠出産はまさに母体の命を削る作業。命のゆとりのなさは月経の不調という形で現れます。生理の苦痛、不調ははQOLの低下もそうですが、個人差があるので例え同性であってもその辛さが理解されにくかったりという悩みもあるようです。生理痛はないのが当たり前、という漢方家の先生もいらっしゃいます。我慢できるから…と放置せず、自分の体をチューニングするように、体調の変化に耳を傾けて欲しいと思います。

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子供を将来授かることを考えれば、なるべく自然な形で治療をしたいですよね。そういった思いから漢方の治療を選ぶ方も多いですね。

 

まず、月経周期は大きく分けて4つのステージに分けることができます。低温期、排卵期、高温期、そして月経期です。

 

低温期は生理終了後から1週間から10日の期間で、一般的に女性が体調も精神的にも最も調子がよい時期です。この期間は次の生理に向けて子宮内膜を厚くし、卵子を育てなくてはなりません。

 

中医学では陰陽の概念を大切にしますが、この低温期は陰にあたります。陰に属する時間帯である夜間にゆっくり休息をとることはとても大切です。

 

基礎体温をきちんと測っている場合は、低温期は36℃から36.4℃を目安に安定しているかを確認しましょう。

 

この低温期の体温が高すぎる、低温期の期間が短すぎる場合、陰の不足と捉えます。漢方薬としては腎陰を補う基本処方である六味丸が使いやすいかと思います。より切れ味のよい効果を求めるのなら動物性生薬の亀の甲板、阿膠、紫河車(プラセンタ)などを使用します。

 

冬が深まれば自然と春になるように、陰が極まれば自然と陽に移行します。同様に、低温期の子宮内膜、卵子の成長が不十分だと当然そのあとの排卵、着床のステップはうまくいきません。不妊治療をされる先生の中には低温期に集中して陰を補給するようにします。

 

次の排卵期。低温期でしっかり陰に入れば排卵期はメリハリよく体温が上昇します(厳密には一旦下がって、また上昇します)。この体温上昇は1〜3日、できれば2日ほどで理想的上がるのが理想的です。ここがダラダラと長引く、という場合は陰から陽への切り替えにがうまくいかないケースです。このような場合や、排卵痛がある場合は肝気の乱れが原因として考えられます。逍遥散は比較的穏やかな肝気の乱れを整える薬です。肝気の鬱滞をほぐしとる疏肝の効果に加え、胃腸を整える健脾、肝気の行き過ぎを抑える養血効果を合わせて持つため虚した病態にも使いやすい方剤です。頭痛や、脇腹の張った感じなどが続く方は全周期通して服用していただくのがいいでしょう。

 

乾燥した陰虚症状が強ければ滋陰至宝湯も良いですし、イライラ、のぼせ、めまい、頭痛など心火をもつ場合は女神散も有効です。

 

生理の周期がまばらな生理不順もまた肝気の乱れの結果であることが多いようです。その場合もここで紹介した逍遥散、滋陰至宝湯、女神散などを全周期で服用する方法があります。

 

この排卵期はおりものが増えるのが一般的です。精子が子宮内を泳ぎやすくするためですね。ですから下着に多少の汚れが目立つのは当然です、またそれが少ないようだとこれもまた陰の不足が考えられます。低温期のときにもう少し手厚く補陰する必要がありそうです。

 

排卵期の後、12日から14日が高温期です。排卵後の黄体からの黄体ホルモンにより体温が上昇し、卵子が着床しやすくなります。この時、低温期から+0.4℃が目安ですが、36.6〜36.8℃が理想です。

 

まず、ここで体温が低すぎる場合にはやはり体の陽気の元となる補腎陽が大切になります。八味丸などは腎陰陽両方を補うため使いやすい方剤ですし、切れ味を求めるなら鹿茸製剤が優秀です。

 

妊娠中の赤ちゃんにとって冷えは命の危険に繋がります。赤ちゃんは子宮が冷えていると暖かいお母さんの心臓の側に手をできるだけ伸ばして、体を温めるのだそう。その結果逆子になってしまうケースもあります。高温期もそうですが、全周期で体温が低いケースも補陽、もしくは補血が肝腎になります。

 

高温期はまた、排卵期同様気の流れにも負担がかかります。自由に広がることを特徴とする気が無理やり生理のために子宮に集められので、体の余裕のなさが出やすくなります。その結果とイライラ、頭痛などのPMS症状が出やすくなります。こういった不調が出やすい方は排卵期から高温期、生理はじめまでは疏肝剤を服用することがよいでしょう。

 

高温期が終われば次は生理期。煩わしいですが、不要になった子宮内膜を掃除し、次の周期に備える大切な期間です。短すぎず長すぎず、5〜7日が理想的です。

 

痛みに悩まされている方も多いのではないでしょうか。この期間は普段より無理せず、冷飲食を避けるようにしましょう。痛みが多い方では血液の流れが悪いことが多いようですので、シャワーで済ませず、半身浴などで下肢をよく温めましょう。整理中、オーガニックコットンや布でできたナプキンがおススメです。体が冷えにくい、と言われていますが、その効果は科学的な根拠はないとか。ただ、肌ストレスが減るだけでも快適度は上がります。

 

この時期の不調はやはり1番は生理痛ですね。基本は瘀血が原因になったいることが多く、活血剤を使うことが多いです。桂枝茯苓丸は比較的平性で使いやすいですね。便秘があるようなら活血の力が強い蘇木を使った通導散もいいです。また、活血のみではなく、気鬱痛みのもとになります、はり感のある頭痛、腹痛、脇腹の痛みなどあれば上で上げたような疏肝剤を使うと良いようです。

 

生理終わりがけに頭痛、ふらつき、気分の落ち込みなどの不調が出る方がいます。この場合は血虚の不調です。四物湯が入った血府逐瘀丸や婦人宝、十全大補湯など付随する症状に応じて選択するようになります。

 

全周期を通して女性の体の不調に適応範囲が広い方剤が婦人宝。四物湯と四君子湯を基礎に黄耆と阿膠を加えた方剤です。特徴は四物湯に含まれる当帰の割合が圧倒的に多いという点。当帰は“調経”作用があり、ホルモンバランスの乱れを整える効果があります。当帰は補血薬のとしてのイメージが強いですが、補血よりも、特に肝の領域の気と血の流れを強く効果がある、陰よりどちらかというと陽への働きが強くあります。さらに阿膠を加えていることから陰の補充と、月経過多、貧血の予防を意識していると考えられます。また、血虚傾向の人が抱えがちな脾の弱さに対する配慮が四君子湯です。黄耆も上向き、外向きに気の流れを作るのでこちらも流れに対する配慮ですね。脾虚のような血の生成工場が弱い素体、肝鬱のような気血の流れが滞っている素体に対して、単に地黄、阿膠など腎陰の材料となる素材を入れると、滞りや虚が逆に目立つ結果になります。その点、大きな虚がなければ婦宝のような方剤は守備範囲が広く、使いやすい方剤です。病名で漢方を処方すること自体は反省しないといけないところが多いのですが、選択肢として持っておきたい内容です。

 

女性の体調はその本人がもともと持っている体質的な部分と、周期の中でどんな状態であるかが複雑に絡み合ってきます。また、生理のとききの体調に関する情報で、直接生理と関わりのない病態の治療であっても本人の体調の弱点を知ることができます。月経周期でゆらぐ女性の体のバイオリズムを掴むのに本項が役に立てば幸いです。

 

中医学:桂枝湯

こちらも臨床ではあまり前にでてこないですが、その構成をよく知っておく必要がある方剤です。

 

風邪の初期治療の問診でまず風寒か風熱か、外邪の種類を見極めなくてはいけません。悪寒悪風があり風寒と判断したら、次に確認すべきが汗の有無。無汗で体力があれば麻黄湯、そして有汗であれば桂枝湯の出番です。

 

内側の正気を強力に引き出す表実証の麻黄湯と比較し、桂枝湯は邪を追い払う十分な衛気不足がある表虚証が適応となります。

 

気の巡り、津液の巡りを知るために汗は重要な手がかりです。麻黄湯では発汗することで邪を散らしていますが、単に発汗が解熱効果があるというわけではありません。桂枝湯が適応となる処方では発汗が逆に邪を体内に入り込む隙を与えていると捉えます。麻黄湯証の内側からの力強い発汗と異なり、桂枝湯証では体表を守る衛気の不足により、腠理(肌表面に存在する汗腺のような穴。気や津液の通り道)を適切に締めることができず、汗が漏れ出るようになります。その腠理の穴から外邪が入り込み、悪寒悪風をするような状態です。

 

構成は

  • 桂枝 9
  • 芍薬 9
  • 生姜 9
  • 大棗 9
  • 炙甘草 6

 

基本的に食べ物に含まれるようなものしか入っていないので飲みにくさはありません。甘くて美味しい方剤です。

 

桂枝湯は扶正去邪のという、正気を補う作用と邪を散じる作用を併せ持ちます。

 

去邪のために主薬として桂枝が用いられています。桂枝は麻黄湯の時も説明しましたが腎の正気を表層まで一気に持ち上げ、発汗させる、辛温解表薬です。麻黄よりも穏やかな発汗力のため発汗しすぎることでの消耗の心配が少なく、表虚証であっても安全に使用できます。

 

そして扶正の役割として白芍薬が配合されています。芍薬は養陰収斂作用により、発汗過多による営陰不足を防いでくれます。

 

桂枝と芍薬のペアで表の陰陽の調和を整えるのに対し、裏の陰陽は生姜と大棗がバランスを保ちます。生姜もまた辛温解表作用を持ち、桂枝湯の解肌発汗作用を増強させませす。また、大棗が裏の陰を補充することで陽気とともについて巡る陰液の動きをスムーズにします。

 

甘草は脾気と陰液を補充して扶正の効果を強め、方剤の角を取ってくれます。

 

麻黄湯が陽気を強烈に動かすのに対して、桂枝湯は気と津液の巡りを緩やかに整えます。発汗作用は弱いため、桂枝湯を服用した後は少量のお粥を食べて、ふとんをかぶり熱を体に持たせ、邪気を汗とともに排毒するようにする、と原文(傷寒論)には加え書きがあるようです。また、脾胃の気を損なうことがないように、生ものなど、消化の悪いものは食べないように、との指導も必要となります。

 

桂枝湯では上へ気と津液を導く桂枝と下へ引き込む芍薬が1:1で配合されることで、上下の力を平衡にしています。この配合のバランスを変え、こ芍薬を桂枝に対して倍量で配合した処方があります。小建中湯、桂枝加芍薬湯などです。これらの方剤は下への引き込みを強くすることで裏の気血を導く構成です。それにより全く効果は変わり、解表効果ではなく、裏を温める和裏剤になります。

 

また、邪が誤って深くに入り込んでしまった時には桂枝湯去芍薬のように、桂枝湯から芍薬を除き上方向の発散の力だけを用いた方剤も使われることがあります。

 

全く同じ構成生薬を用いて、その配合バランスからここまで違う証に対応するようになる、というのは不思議ですし、本当に配合バランスは大切なことと教えてくれます。安易に1+1と足し算で薬を合剤できないことをよく教えてくれます。

 

経験抱負な漢方家によれば娘が嫁に行くなら桂枝湯を持たせろ、と。妊娠中、産後の風邪にも、幼児の腹痛、風邪にも使用が可能な安全で守備範囲が広い方剤です。産後は特に、気血が虚することで風邪ではなくても発熱、多汗の症状がでることがあります。こういう時にも桂枝湯は表裏の陰陽を無理なく整えてくれるので有効です。

 

漢方といえば有名な葛根湯。こちらも桂枝湯をベースに組み立てられています。安易に長期の使用をするのは感心できませんが、葛根湯が広く用いられるのも、この桂枝湯の気と津液への穏やかな働きかけがあってこそと思います。

 

 

中医学:麻黄湯

漢方の代表方剤の1つ麻黄湯。インフルエンザの治療で有名になりました。漢方薬は薬味がシンプルなものほど効果が早く出ます。麻黄湯ももちろん、即効性で有名。また、服用のタイミングが難しく漫然と継続しないで欲しい薬です。

 

薬味は4種。

  • 麻黄 (6g)
  • 桂枝 (6g)
  • 杏仁 (6g)
  • 甘草 (3g)

 

麻黄湯はまず方剤学の教科書の1番目に出てくるような代表方剤ですが、もう一歩先に更に麻黄湯の元になっている処方があります。それは日本で手に入る方剤学の教科書ではほとんど見かけることはないのですが、“三拗湯”という処方です。この三拗湯をベースに、麻黄湯、麻杏甘石湯、五虎湯、麻杏ヨク甘湯、神秘湯、続命湯などがさまざまな方剤が作られています。

 

この三拗湯は麻黄、杏仁、甘草の3種類からなります。痲黄は体の内側の生気を体表に引き出します。痲黄のこの引き出しによって、内部から心肺の領域まで陰陽の生気が運び込まれます。ただ、この生気のもとになるのは脾胃の気がベースになりますので、脾胃に元気が足りないと吐き気、食欲不振の症状がみられることがあります。そして、陰陽両方つれだって体表に向えばよいですが、ベースに陰虚があると動きのいい陽についていけず、陰が不足し、陽気が立ち上がりすぎてしまいます。そのため動悸、不眠、煩躁感が表れます。

 

そして、麻黄が引き上げた生気を杏仁が内側に引き戻す。これによって、内部から外部への物資の供給と、余った物資の回収ができるようになります。強力な生気を運ぶベルトコンベアのイメージです。

 

その麻黄と杏仁で作った内から外、そして外から内へ流れるベルトコンベアに乗せて運ぶものをプラスします。三拗湯ならそれは甘草で膨らませた脾気。麻黄湯なら脾気に加えて、桂枝で膨らませた腎気と発散力です。桂枝は体の深部である腎から肺の領域まで生気をまっすぐに引き出す力があります。ウィルスに対抗するには肺気より腎気の封蔵の力が効果を出します。津液の補充は少なく、陽気へのみ働きかけるのが葛根湯や桂枝湯との大きな違いです。

 

この三拗湯の働きを押さえておくと、この系統の薬の理解に薬に足します。麻杏甘石湯は皮膚表面に石膏の清熱効果を届ける、麻杏薏甘湯は肺の領域に薏苡仁の湿を除く力を届ける方剤です。同じ骨格を持っている神秘湯などは三拗湯に厚朴、陳皮、紫蘇、柴胡を加えています。気を動かす力を三拗湯にのせてさらに力強く肺に届ける処方なので、かなり気に揺さぶりがかかり、患者の素体に力がないと危険です。そのため発作時などは禁忌とされます。

 

麻黄湯の解熱の効果は清熱ではなく、発汗により陽気を外に出します。陽気が体表に到達できず、寒気があり汗のない状態が適応です。麻黄はエフェドリンを含み、動悸や不眠を助長するので陰虚症特にに注意し、妊婦、小児には注意して使わなくてはいけません。気血津液どれかが虚している者には使用を控え、大量の発汗が心配な場合には白芍で津液を補充したり、五味子ですこし発汗を止めるような調整をすることもあるようです。

 

心配であればより発散力が少なく、津液の補充がある桂枝湯の方が安全に使えます。ただ、どちらにしても桂枝を含む以上は腎気の肺領域への穿通が期待できますが、“引火帰原”という、逆に邪気が腎に入り込むすきも与えてしまうので注意が必要です。

 

 

中医学:黄連解毒湯

先日紹介した四物湯に加えて、黄連解毒湯は私にとって初期に覚えた大事な方剤です。もちろん、方剤学から見ても基本の一つに数えられます。

 

黄連解毒湯はこの仕事に入ってから私が始めて服用して、効果が実感できた方剤なんです。中学生から20年以上繰り返しできる手湿疹に抜群の効果でした。

 

正式にはその時服用したのは温清飲。四物湯と黄連解毒湯の合剤です。この温清飲は私が思うに、厳しく諌める父(黄連解毒湯)と優しい母(四物湯)のような方剤。温清飲の中のまさに陰と陽。

 

黄連解毒湯は三焦の実火に対する処方です。効能は瀉火・解毒。主治は三焦熱盛・火毒。

 

まず、火毒とは。熱は盛んになれば火になります。火は甚しければ毒となります。熱→火→毒の順番に重く、体に害を与える存在となります。この熱が高じてできた毒が火毒、黄連解毒湯の適応となります。

 

構成成分は4種類です。切れ味がいい方剤の構成はだいたいシンプル。薬味とそれぞれが清熱する部位を示しました。

 

黄連…中焦(胃・肝・胆)と心
黄ごん…上焦(心・肺・大腸・小腸)
黄ばく…下焦(腎・膀胱)
山梔子(さんしし)…三焦

 

黄連解毒湯の主薬は黄連です。黄連は大寒大苦で、1番清熱作用が強い生薬です。胃熱を清するので中焦の実火を取るといわれ、胃潰瘍、胃出血、胸やけ、嘔吐、口内炎などの治療に使われます。また、神明を主る心の火を清するので、煩躁、不眠、なども解消します。また、血脈を主る心を清することで出血病変を改善し、その凉血作用から肝の熱を解消します。また湿熱を解消するので大腸湿熱にも効果があり、実際殺菌作用も認められています。

 

次に黄ごん。同じく清熱と燥湿が特徴です。上焦の実火を清するのが得意で、歯の痛み、口腔の潰瘍、咽頭痛、扁桃痛、咳嗽など肺領域が専門です。黄ごんが働くのは上、というより肺が主る表面(粘膜)のイメージでしょうか。大腸、小腸にも効果が高く、抗生物質にも匹敵するような殺菌作用があるようです。粘膜に働きかける性質からか、安胎効果があると言われています。清熱効果は止血作用にも通じるので、切迫流産、堕胎後や流産後の出血、月経の出血過多にも応用されます。清熱作用自体はそこまで強くないですが、上昇の熱を下に下げるような下向きの作用もあります。注意が必要なのは漢方薬で報告されるアナフィラキシーのような副作用は黄ごんが原因と見られています。

 

黄ばくは下焦、腎や膀胱の湿熱に効果を持ちます。清する熱は実熱ではなく虚熱。陰虚証によって虚熱が上昇に浮き上がったものを引き下ろす効果もあるので、単に下焦だけに効果があるわけでなく、腎から浮き上がった上焦の熱にも対応します。そのため、通常の陰虚症状、盗汗、遺精、多夢などの症状に関連します。ただ、マイルドな清熱薬として、老人や小児の皮膚症状など、場所を問わない使い方をする場合もあります(梔子はく皮湯)。

 

最後に山梔子、クチナシの実です。山梔子は三焦に通じて、心、小腸、膀胱の経路を介して津液代謝の経路を使って尿から熱を排泄します。

 

全体に強い躁性、寒性があるので胃腸が弱い人には注意が必要です。もちろん明らかな熱症がなければ使うことは危険ですし、陰虚の傾向の人には使えません。また、血熱による出血に効果がありますが、もちろん気虚の出血には使えません(気虚の出血には芎帰艾膠湯が◯)。

 

このような弱点、副作用を軽減するために四物湯などと組み合わせて使うことがあります。こうしてできた合剤が温清飲です。

 

黄連解毒湯が適応する病態として「血熱妄行」という表現があります。血熱妄行とは炎症や自律神経の亢進など生体反応の機能亢進により起こる出血、皮膚疾患などのことです。清熱薬は炎症を鎮め、機能亢進を抑制したりする効果で代謝亢進によって起きる消耗から生体を守る効果があります。そのため、安易な長期の使用は生体の陽気ののびを無理やり抑えこむ副作用があるといえます。必要であれば気血の流れを整えるような陽気不足をフォローする方剤の併用を検討することも大切になります。

 

また、清熱剤による陽気の抑制は抗がん剤の作用と類似していると言われていますので、腎気を抑え込んでいる、といつ作用も考えておく必要があります。

 

黄連解毒湯と構成が似た方剤に三黄瀉心湯があります。黄連、黄ごんを共通として、黄連解毒湯では黄ばくと山梔子で尿から熱を排泄するのに対し、三黄瀉心湯では大黄を採用し、便から熱を排泄する構成。同じく寒性、燥性が強い方剤ですが、大黄を足すことにより便通改善、というより下向きの力を強くした上部の実熱を力強く下へ下ろす構成です。

 

黄連・黄ごん・黄ばくの3種は清熱の代表生薬であり、さまざまな方剤に組み込まれます。どの生薬を選んでいるかをよく観察することは方剤の意図を理解するために役に立ちます。四物湯同様単独での使用は少ないですが、方剤を理解するために基本の処方です。

中医学:四物湯

少しずつ方剤の話も紹介してく。

 

まず女性の血の道症へ応用が広い“四物湯”について。血道症とは女性のホルモンバランスの乱れを原因とした体調不良のこと。四物湯は“血虚”の治療に用いられる補血薬の基本処方だ。

 

四物湯の原典は“和剤局方”。この和剤局方のし四物湯は“金匱要略”の芎帰膠艾湯より止血作用をもつ生薬を除いて作られました、

 

血虚とは“血”の不足のこと。注意がが必要なのは中医学で言う血虚は貧血のことではない。ここで言う血虚は赤血球や血色素のこととまったく関係なく、自律神経や内分泌系の失調を基礎とする。貧血症や術後の出血のような造血を目的とするときは捕気薬を基本に補血薬を補助として用いる(十全大補湯)。

 

基本処方、というわりには薬局で四物湯が動くことは少ないのではないだろうか。実は四物湯が単独で用いられるケースは非常に少ない。ただ、四物湯を基本に発展した方剤は数え切れなく存在する。薬味がった4つというシンプルな四物湯だが、それぞれの生薬の働きを押さえておくと、それらの四物湯を応用した方剤の理解がぐっと増す。実際使うことは少なくても早い段階でその特質を押さえておきたい方剤だ。

 

四物湯の組成は4つの生薬からなる。

  • 熟地黄 (4g)
  • 白芍 (4g)
  • 当帰 (4g)
  • 川芎 (4g)

 

補血薬というと陰血を量的に増加させるのが1番の目的。しかしそこに適度に流れも介入するバランスのとれた方剤だ。

 

まず君薬である熟地黄。全ての陰血の元になる腎陰を増す代表生薬である。

 

次に白芍。肝陰を補充する。四物湯の構成生薬中唯一凉性だ。芍薬で補給する陰はストレスで熱くなりがちな肝を水冷式で冷やす役割がある。

 

当帰は婦人科の治療の代表生薬。当帰は肝血を補うとともに、補った血を肝から心まで巡らせる。つまり陰血の量とともに動きにまで働きかけをする。

 

川芎はセリ科の薬草だ。川芎はほとんど陰の過不足には働きかけず、肝腎で補った血を下方から上方へ動かす役割をもつ。

 

四物湯を服用するとセロリのような香りがします。これはセリ科の当帰と川芎の2種類が元になっています。セロリの香りの好き嫌いはともかく、香りのいい生薬は気血津液の流れに働きかけるものが多い。

 

 

栄養学:コレステロール3部作 完結編

コレステロールについて書き続けてきましたが、ではそのコレステロールとうまく付き合うために薬剤師としてどんなアイテムが使えるかをお話します。

 

まず、コレステロールを作るのも回収するのも肝臓の役目です。肝で代謝を受けるのは悪玉、善玉の両方そして食事由来の中性脂肪です。そのため脂質の代謝をスムーズにするためには肝の炎症(脂肪肝)を改善することは最優先事項です。

 

まず肝の炎症で使用する第一選択は田七製剤です。田七はウコギ科サンシチニンジンの根を加工したもので、一般にいう人参であるウコギ科オタネニンジンとは別種。金不換とも呼ばれますが、金でさえ換えたくないほど値打ちがあると言われました。効能としては化瘀止痛、活血止痛。血液の流れを改善し、なおかつ漏れ出た血液をとめる、痛みをとめる効果があります。

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K.M=KARIBITOさんによる写真ACからの写真

田七人参ではないですが、同じウコギ科コシアブラです。

 

薬剤師をしているとあれ?と思うのではないでしょうか。血液の流れをよくする薬といえば副作用は出血傾向。ところがこの田七は血管内の血液の流れは改善し、漏れ出た血液はとめる、という効果があります。ですので打撲、捻挫などの内出血を治すことは得意中の得意。諸葛孔明も怪我をした兵士に田七を使用したとか。

 

この田七製剤はさまざまな製薬メーカーからでているのですが、脂肪の炎症を鎮める、肝機能改善効果があります。止血効果と比較すると即効性としては弱いですが、継続する服用で肝機能数値はもちろん、それにともないコレステロール値、中性脂肪の数値も大きく変わります。お酒を飲む習慣がある人はぜひ継続して飲んで欲しいアイテムです。

 

もう一つ、肝の炎症を鎮めるためにおすすめしたい栄養素があります。それはEPA、イコサペントです。イコサペントは肝に限らず全身いたるところの炎症を鎮めてくれます。その理由はEPAは炎症を抑制するプロスタグランジン3系の反応を加速させるためです。この抗炎症作用はリーキガット症候群のような腸の炎症でも、花粉症のような鼻粘膜の炎症でも、アトピーのような皮膚の炎症でも効果があります。肝機能トラブルに限らず、炎症体質の人の根本的な体質改善にはかかせない栄養素です。

 

肝臓の炎症を鎮めるとこれだけコレステロールは大切、悪玉コレステロールは悪くない、と言っておきながら総コレステロール値が下がることがあります。どんな検査値でも言えることですが、検査値は高値にする要素を低値にする要素の引っ張り合いです。例えばLDLコレステロールの数値について。肝臓の代謝が悪いとLDLは上がり気味に、それに加えてコレステロールをつくる脂質が不足しているとLDLは下がり気味に。この2つの条件が同時に起きると、LDLの数値は正常範囲内になることがあります。脂肪の炎症をとると、検査値をあげる要素がなくなるためごまかしがきかず、エネルギー不足の低値が明るみにでてきます。このような肝機能のトラブルとエネルギー不足の問題を併せ持っているケースに炎症を改善しながらも脂溶性のエネルギーの補給になるEPAはぴったりです。

 

最近スーパーなどでもω3の油が市販されいて、だいぶ認知もされてきたかと思います。EPAもω3系の油ですが、日本人の場合市販のω3系の油からEPAを合成する酵素はあまり強くないようです。それもそのはず、EPAは魚の油、魚を常食する日本人にとって長いあいだ合成する必要はなかったからです。市販のω3ももちろん良い商品ですが、炎症を鎮める、という目的ではEPAを直接取るほうが圧倒的に効率が良いでしょう。

 

多くのメーカーが販売しているEPA製剤ですが、品質は様々。魚由来の油なのでこだわるならあまり大きな魚は生物濃縮が心配で避けたほうがいいですね。まな板にのるくらいのサイズの魚が適当なようです。サプリが手っ取り早いですが、魚食をかなり中心にできるならそれでもOKです。

 

また、LDLコレステロールの酸化を防ぐために“還元2号方”という処方もおすすめです。この処方は腎臓の血流量を増やすので肝臓疾患より腎臓疾患で進めることが多いですが、末梢血管での抗酸化力が優れているのだとか。血圧降下作用も期待できるため動脈硬化をはじめとして、循環器系のイベントのリスクが高い方にはとても優れた方剤です。

 

逆に数値が低い、というケースにはサメの肝油成分がおすすめです。この肝油成分は短い代謝経路でコレステロールとして変換されるためコレステロール不足の即効性が高くあります。さらにその下流のホルモンを作り出してくれますので、アトピーなどの皮膚症状、不妊骨粗鬆症など改善の効果が期待できます。

 

思いつく限りで私のコレステロール対策はこの4つが柱となります。

栄養学:コレステロール3部作 問題編

動脈硬化のリスクを上げると言われるコレステロール。しかし、体内で重要な役割もたくさん担っています。 悪玉と言われるからといって単純に量を減らしてしまうと細胞に必要な栄養が行き届かず、何らかの不調の原因となります。

 

 実はコレステロールに悪玉、善玉のような種類があるわけではありません。

 

コレステロールは油に近い性質を持つため水に溶けません。そのため血液中を滞りなく流れるためには“乳化”という特別な状態をとるようになります。乳化とは油と水になじみやすい部分をもつ分子によって油成分が水に溶け込めるようになることです。

 

乳化に必要なのは細胞膜の材料になるリン脂質やタンパク質です。リン脂質やタンパク質は油と仲がいい親油基と、水と仲がいい親水基を持っています。この親油基を内側に、親水基を外側にして、複数のリン脂質でコレステロールのような油性ものを包み込みひとつの球体を作ります。そうして球体自体は水に溶けますが、内側に油性の物質を抱え込むことができるようになります。これがコレステロールが血中にとける理由です。同じ仕組みで、中性脂肪脂溶性のビタミンもこの乳化によって血中に溶けて、運ばれていきます。

 

このリン脂質とタンパク質でできた球体にのってコレステロールは運ばれていきます。このコレステロールを乗せた球体のなかで、体の細胞隅々にコレステロールを運び、受け渡しをするものが悪玉コレステロールと呼ばれます。また、同じくコレステロールを乗せた球体の中でも末梢の余っているコレステロールを回収するものが善玉コレステロールと呼ばれます。

 

繰り返しますが、末梢にコレステロールを運ぶからと言って悪玉コレステロールが悪いわけではありません。コレステロールはその抹消の細胞で必要な栄養だからです。問題はその末梢に届けられたコレステロールが何かのきっかけで本来の役割と外れたものに変性をしてしまうことです。

 

コレステロールを本来の役割を失わせ、さらに動脈硬化の原因とまでしてしまうきっかけ。それはコレステロールの“酸化”と“糖化”です。

 

酸化とはカラダのサビ、と説明されます。通常は細菌感染や初期のがん細胞など、私たちの健康を害する原因を除去するために必要なものですが、この酸化が必要以上に強く働いてしまうと正常な細胞にも傷をつけます。この酸化ストレスが引き起こすカラダの不調はわかっているだけでも、シミやシワ、うつ病アルツハイマー認知症、そして心疾患や動脈硬化です。

 

加えて、悪玉コテステロールに関しては“糖化”も気にしなくてはいけません。先ほどコレステロールはリン脂質とタンパク質で作られた乗り物に乗って運ばれる、とお話しました。“糖化”とはこの乗り物の構成成分であるタンパク質と血液中の糖質が結びついて、タンパク質が正常に機能しなくなることです。乗り物が壊れたコレステロールもまた、動脈硬化の原因となる悪玉なのです。

 

このコレステロールの酸化と糖化による悪玉化を防ぐため、私たちにできることを考えていきましょう。

 

まず酸化を避けること。過度の飲酒と喫煙は避けましょう。喫煙は特に控えるべきです。タバコを吸うことにより、顕著な酸化ストレスが発生し、それがコレステロールの酸化につながります。喫煙により血管疾患のリスクが高まるのはこの理由です。

 

酸化ストレスは環境の変化など、心理的なストレスが高まった時にも発生します。なるべくのんびりと、余裕をもてる状態を保つことも大切です。

 

酸化ストレスを打ち消す方法もあります。それはビタミンCやビタミンEなど、抗酸化作用をもつ栄養素をしっかりとること。

 

尿酸値の高値も要注意です。コレステロールが私たちの体に大切な役割を持つように、尿酸もまた役割があります。それは自前の抗酸化物質になるということです。ビタミンCやEなどを作り出すことができない私たちの体は酸化ストレスに対して尿酸で対応します。この尿酸が高い、ということは体内で酸化がおきているひとつの目安となります。尿酸そのものにコレステロールの酸化を促す効果はありませんが、尿酸が高いということは酸化ストレスが強くなっているひとつの指標として参考になります。

 

次に糖化ストレスについて。糖質はタンパク質と結びついてそのタンパク質を本来の役割ができないものにしてしまいます。この糖化は動脈硬化不妊や、認知症骨粗鬆症の原因にもなります。

 

糖化ストレスを防ぐためには、もちろん糖質の食べ過ぎを防ぐことです。コレステロールの高値だけなら大丈夫ですが、血糖値の高さも同時に指摘を受けていたら危険です。甘いものは避け、丼もの麺モノなど糖質の多い食事も避けたほうがいいでしょう。

 

また、肥満も注意が必要になります。肥満とは脂肪細胞が余分な糖質を食べ過ぎて膨らんだ状態になったこと。脂肪細胞は脂肪をため込むもの、と思われがちですが実はこちらも他に役割があります。それは代謝に関係するホルモンを分泌する、ということです。脂肪細胞が脂肪を蓄えて膨らむと、コレステロールの糖化を促すホルモンが多く分泌されるため、より動脈硬化が進行します。そのため、肥満体型、特に内臓脂肪が多い方はやはり少しダイエットの必要があります。

 

ちなみに、コレステロールは悪玉コレステロール(LDL)として140mg/dl以上が脂質異常症と診断を受けます。しかし、実際総コレステロールにして200~220mg/dlの人と180mg/dl未満の人を比較して死亡率、ガンの発生率ともに後者が高いというデータが取れられているようです。

 

以上よりコレステロールは量より質が大切であることが言えます。

 

栄養学:コレステロール3部作 役割編

悪者とされがちなコレステロールですが、最近だいぶ風向きが変わってきたかと思います。今日はコレステロールについてノートをまとめていこうと思います。

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以前は高脂血症と言われましたが、今は脂質異常症、と呼ばれています。血中の脂質が多いことにより、動脈硬化、特に冠疾患の危険因子が高い病態のことを指します。

 

高脂血症脂質異常症と呼び方は変わりましたね、ポイントは以前は悪玉と呼ばれるLDLコレステロール中性脂肪の高さを問題視していたのが、最近では善玉のHDLコレステロールの低さが重要視されてきたためかと思います。“高”脂血症という呼び名が適切ではなくなったからですね。

 

脂質異常症の診断基準はこちらです。

 

以前は脂質代謝異常症の人への栄養指導は脂質、特にコレステロールを多く含む食品を制限するように伝えていました。例えば、卵、ししゃも、レバーや魚卵です。動物性食品の脂を多く含む部分にコレステロールは多く含まれます。

 

ところが最近では血中のコレステロールは外因性より内因性のものが多いと知られてきていますね。つまり、食事由来より、自分自身の肝臓から作り出すものの方が影響が多いのです。そのため、食品に含まれるコレステロールはあまりうるさくいわれなくなってきました…卵は1日に何個食べてもOKです。

 

コレステロールといえば悪者のイメージが強いですよね。そもそもなぜ肝臓はコレステロールを作っているのでしょうか?

 

大切なこととして、基本私たちの体は私たち自身に害があるものは作り出しません。これはコレステロールも例外ではありません(回を分けますが尿酸についてもおはなしします!)。

 

コレステロールは実は生体のエネルギーに加え、多くの内分泌ホルモンのを材料となります。これは他の物質では代わりになりません。コレステロールを材料にして合成されるホルモンは以下の通り。

 

コレステロールは体内のいたるところに存在して内分泌を調整しています。代表はステロイドホルモン。ステロイドホルモンは抗ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾール、ミネラルをコントロールするアルドステロン、男性ホルモンのアンドロゲンや女性ホルモンのエストロゲンになります。

 

体内至る所で必要としているからこそ、血中内にコレステロールが必要なのです。

 

不妊治療の分野でコレステロールは大変注目を浴びています。コレステロールは女性ホルモンの材料ですよね。実際コレステロールが低い女性は不妊になりやすいというデータがあります。生殖産業ではコレステロールは高値より低値の方が問題となるのです。

 

また、コエンザイムQ10も聞いたことはあるのではないでしょうか。老化を防ぐ抗酸化物質です。意識高そうなサプリに入っている印象ですが、本来ならこれも自分で代謝して作り出せるものです。

 

単純にコレステロールが高いからと言って、これを下げてしまうと…どうなるか。これら全ての内分泌ホルモンの供給が途絶えてしまいます。

 

実際コレステロールは少し高めの方が余命が長いというデータがあります。

 

なぜここまでコレステロールは悪者となったのでしょうか?それはコレステロール動脈硬化の原因としての主犯格である疑いがかかったからです。

 

血管の動脈硬化に関してコレステロールは無関係ではありません。ただ、コレステロールが悪さをするには、コレステロールだけの責任ではないのです。1人では悪さはしないけれど、仲間がいると素行が悪くなる中学生のように、コレステロールが悪者になる過程にはまた他の条件が必要となるのです。そしてその条件、真犯人の取り締まりの方がコレステロールよりよっぽど重要です。これは次回に続けます。