中医学:肺の役割

心に続いて、次は肺の役割です。

 

中医学で話される肝心脾肺腎の五臓は西洋医学で扱われる臓器の働きと関連は深いです。が、イコールではなく、より概念的な存在なので、ここも細部にあまりこだわりすぎないようにしましょう。

 

肺は五臓の中で最も上にあり、“五臓六腑の蓋”や“華蓋”と呼ばれます。肺は人体の中で外界に開かれた唯一の臓器です。肺と関わりが深いのは大腸、鼻、気管支、喉などすべて外界と生体の境目となる部位です。

 

前回心を自然界でいえば太陽、とご紹介しました。五臓の中で最も上層で体の体表を守る、自分と他の境界線を敷くのが肺です。自然界に例えれば大気圏でしょうか。

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RPGsonchoさんによる写真ACからの写真

肺の役割は以下のような記述で表されています。

  • 肺は気をつかさどり、呼吸をつかさどる
  • 肺は宣発をつかさどり、皮毛を外合する
  • 肺は粛降をつかさどり、水道を通調する
  • 肺は水の上源
  • 肺は百脈を朝する
  • 肺は鼻に開竅し、その液は涕
  • 肺の華は毛

 

肺は気をつかさどります。この意味は主に2つ。外から清気を取り入れる作業と、気の運行をコントロールすることです。いろいろ枝葉はついても肺の働きはこの2つに集約されます。

 

まず大切な役割として肺は気の生成を担います。肺は飲食物から吸収された気や精と、肺で取り込まれた清気を合わせて人体に有用なエネルギーとなる“気”を作り出します。

 

排気が弱まり、気の生成が滞ると呼吸があさくなる、声が小さくなる、体に力がないなど気が不足した“気虚”症状が見られます。

 

また肺は外界から得られた空気である清気を全身に巡らせる役割を担っています。この清気を受け持つ、という言葉に清気を体の各部位にまんべんなく送るということも含まれます。特に、肺より上部である頭部への気の供給をここでは強調しています。この清気を受け持つという肺の働きが弱まると、めまい、鼻づまり、鼻の乾燥、耳鳴りなど視覚、聴覚、嗅覚に影響を与えます。

 

また肺は宣発をつかさどります。宣発とは聞きなれない言葉ですが、気を上に、そして外側に動かす、という意味です。端的にいうと息を「吐く」ことも宣発です。この宣発が具体的に行うことは主に4つ。

  • 濁気を外に排出すること
  • 飲食物から得られた気を体中に配分すること、
  • 気を体表に配置し、生気が漏れ出ることを防ぎ、かつ邪気の侵入を阻むこと
  • 清気を上部にある器官に配分すること

 

この宣発の働きが弱まると、風邪をひきやすくなる、汗がでやすくなる、皮膚がかさかさになるなどの体表のトラブルが起こりやすくなります。

 

また、宣発は濁気の皮膚からの排泄も担っていますので、適度に汗をかくことで皮膚トラブルを改善するなどの治療法をすることもあります。

 

次に、肺は宣発とともに粛降を行います。粛降とは先発とは逆に気を下へ、そしてうちに動かすことです。息を「吸う」ことと通じます。

 

粛降は具体的には以下のような4つの働きを持ちます。

  • 清気を吸い込み、その清気を下へ送る
  • 気の上逆を防ぐ
  • 飲食物で得られたエネルギーを下へ送る
  • 体の上部の水を下へ流す

 

粛降の特徴として、気を下に送るときに水を引き連れます。肺は上部に位置していますので、屋根の上に給水タンクをおいたイメージです。肺が必要に応じてコックをあげて水を下部に流します。これが肺は津液の運行をつかさどる「水道を通調する」の意味です。

 

この粛降がうまく働かないと、しゃっくり、咳など気の上逆がおきる、顔がむくむ、肺や気管支に痰(流れの悪い水)がたまるなどの症状が現れます。

 

この肺による粛降と宣発の働きで気の流れが内側から外側へ、そして体表に到達すると今度は外側から内側へと引きもどるという流れができます。

 

この宣発と粛降の組み合わせは潮の満ち引きのように体内のリズムを作ります。これが「肺は百脈を朝する」の意味をさします。百脈とは全身の経絡。その経絡を流れる気が常に行き交う、動き続けるのは肺気の力によりコントロールされているのです。

 

肺は呼吸をつかさどる器官です。その肺が鼻を支配するのは自然なことのように感じます。肺気が滞ると、鼻が詰まる、鼻水がでる、匂いがわからなくなるなどの症状が現れます。このつながりで、鼻から流れる涕(鼻水)が肺の液といわれます。

 

また、肺の華は「毛」となっていますが、この毛は髪ではなく、皮毛。肌に生えるうぶ毛です。

 

肺は免疫機能、アレルギーと深いつながりを持ちます。一般的にアレルギー、というと喘息、じんましん、アトピー、花粉症ではないでしょうか。アレルギーもいろいろとタイプがありますが、今あげたものはIgEという抗体が関与する即時型アレルギーと呼ばれるものです。

 

喘息は肺そのものと気管支。じんましんやアトピーは肌。花粉症は鼻。IgE抗体が関与するアレルギーは全て肺のコントロールの下にあるパーツばかり。そして、同じく肺と深いつながりがあるパーツとして大腸があります。

 

「免疫力は腸内環境から」と最近だいぶ浸透してきていますが、東洋医学ではもう何前年も前からそのつながりを経験的に解き明かしていたようです。

 

最初に肺は大気圏のように地球を覆っている存在、とお話しました。肺は自分ではない異物に対して最初に接する臓器です。外から吸収する空気も内から吸収する飲食物も肺がまず受け止めて体に取り入れてくれます。肺は「嫩臓(あいぞう)」、弱々しい臓器といわれています。確かに肺は暑さや寒さなど環境の影響を受けやすい弱々しさを持ちます。しかし、”弱々しい”というより、実態を目に見ることができない空気の層のような、当たり前に包み込むやさしい存在なのではないかと思います。

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