中医学:黄連解毒湯

先日紹介した四物湯に加えて、黄連解毒湯は私にとって初期に覚えた大事な方剤です。もちろん、方剤学から見ても基本の一つに数えられます。

 

黄連解毒湯はこの仕事に入ってから私が始めて服用して、効果が実感できた方剤なんです。中学生から20年以上繰り返しできる手湿疹に抜群の効果でした。

 

正式にはその時服用したのは温清飲。四物湯と黄連解毒湯の合剤です。この温清飲は私が思うに、厳しく諌める父(黄連解毒湯)と優しい母(四物湯)のような方剤。温清飲の中のまさに陰と陽。

 

黄連解毒湯は三焦の実火に対する処方です。効能は瀉火・解毒。主治は三焦熱盛・火毒。

 

まず、火毒とは。熱は盛んになれば火になります。火は甚しければ毒となります。熱→火→毒の順番に重く、体に害を与える存在となります。この熱が高じてできた毒が火毒、黄連解毒湯の適応となります。

 

構成成分は4種類です。切れ味がいい方剤の構成はだいたいシンプル。薬味とそれぞれが清熱する部位を示しました。

 

黄連…中焦(胃・肝・胆)と心
黄ごん…上焦(心・肺・大腸・小腸)
黄ばく…下焦(腎・膀胱)
山梔子(さんしし)…三焦

 

黄連解毒湯の主薬は黄連です。黄連は大寒大苦で、1番清熱作用が強い生薬です。胃熱を清するので中焦の実火を取るといわれ、胃潰瘍、胃出血、胸やけ、嘔吐、口内炎などの治療に使われます。また、神明を主る心の火を清するので、煩躁、不眠、なども解消します。また、血脈を主る心を清することで出血病変を改善し、その凉血作用から肝の熱を解消します。また湿熱を解消するので大腸湿熱にも効果があり、実際殺菌作用も認められています。

 

次に黄ごん。同じく清熱と燥湿が特徴です。上焦の実火を清するのが得意で、歯の痛み、口腔の潰瘍、咽頭痛、扁桃痛、咳嗽など肺領域が専門です。黄ごんが働くのは上、というより肺が主る表面(粘膜)のイメージでしょうか。大腸、小腸にも効果が高く、抗生物質にも匹敵するような殺菌作用があるようです。粘膜に働きかける性質からか、安胎効果があると言われています。清熱効果は止血作用にも通じるので、切迫流産、堕胎後や流産後の出血、月経の出血過多にも応用されます。清熱作用自体はそこまで強くないですが、上昇の熱を下に下げるような下向きの作用もあります。注意が必要なのは漢方薬で報告されるアナフィラキシーのような副作用は黄ごんが原因と見られています。

 

黄ばくは下焦、腎や膀胱の湿熱に効果を持ちます。清する熱は実熱ではなく虚熱。陰虚証によって虚熱が上昇に浮き上がったものを引き下ろす効果もあるので、単に下焦だけに効果があるわけでなく、腎から浮き上がった上焦の熱にも対応します。そのため、通常の陰虚症状、盗汗、遺精、多夢などの症状に関連します。ただ、マイルドな清熱薬として、老人や小児の皮膚症状など、場所を問わない使い方をする場合もあります(梔子はく皮湯)。

 

最後に山梔子、クチナシの実です。山梔子は三焦に通じて、心、小腸、膀胱の経路を介して津液代謝の経路を使って尿から熱を排泄します。

 

全体に強い躁性、寒性があるので胃腸が弱い人には注意が必要です。もちろん明らかな熱症がなければ使うことは危険ですし、陰虚の傾向の人には使えません。また、血熱による出血に効果がありますが、もちろん気虚の出血には使えません(気虚の出血には芎帰艾膠湯が◯)。

 

このような弱点、副作用を軽減するために四物湯などと組み合わせて使うことがあります。こうしてできた合剤が温清飲です。

 

黄連解毒湯が適応する病態として「血熱妄行」という表現があります。血熱妄行とは炎症や自律神経の亢進など生体反応の機能亢進により起こる出血、皮膚疾患などのことです。清熱薬は炎症を鎮め、機能亢進を抑制したりする効果で代謝亢進によって起きる消耗から生体を守る効果があります。そのため、安易な長期の使用は生体の陽気ののびを無理やり抑えこむ副作用があるといえます。必要であれば気血の流れを整えるような陽気不足をフォローする方剤の併用を検討することも大切になります。

 

また、清熱剤による陽気の抑制は抗がん剤の作用と類似していると言われていますので、腎気を抑え込んでいる、といつ作用も考えておく必要があります。

 

黄連解毒湯と構成が似た方剤に三黄瀉心湯があります。黄連、黄ごんを共通として、黄連解毒湯では黄ばくと山梔子で尿から熱を排泄するのに対し、三黄瀉心湯では大黄を採用し、便から熱を排泄する構成。同じく寒性、燥性が強い方剤ですが、大黄を足すことにより便通改善、というより下向きの力を強くした上部の実熱を力強く下へ下ろす構成です。

 

黄連・黄ごん・黄ばくの3種は清熱の代表生薬であり、さまざまな方剤に組み込まれます。どの生薬を選んでいるかをよく観察することは方剤の意図を理解するために役に立ちます。四物湯同様単独での使用は少ないですが、方剤を理解するために基本の処方です。

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