中医学:麻黄湯

漢方の代表方剤の1つ麻黄湯。インフルエンザの治療で有名になりました。漢方薬は薬味がシンプルなものほど効果が早く出ます。麻黄湯ももちろん、即効性で有名。また、服用のタイミングが難しく漫然と継続しないで欲しい薬です。

 

薬味は4種。

  • 麻黄 (6g)
  • 桂枝 (6g)
  • 杏仁 (6g)
  • 甘草 (3g)

 

麻黄湯はまず方剤学の教科書の1番目に出てくるような代表方剤ですが、もう一歩先に更に麻黄湯の元になっている処方があります。それは日本で手に入る方剤学の教科書ではほとんど見かけることはないのですが、“三拗湯”という処方です。この三拗湯をベースに、麻黄湯、麻杏甘石湯、五虎湯、麻杏ヨク甘湯、神秘湯、続命湯などがさまざまな方剤が作られています。

 

この三拗湯は麻黄、杏仁、甘草の3種類からなります。痲黄は体の内側の生気を体表に引き出します。痲黄のこの引き出しによって、内部から心肺の領域まで陰陽の生気が運び込まれます。ただ、この生気のもとになるのは脾胃の気がベースになりますので、脾胃に元気が足りないと吐き気、食欲不振の症状がみられることがあります。そして、陰陽両方つれだって体表に向えばよいですが、ベースに陰虚があると動きのいい陽についていけず、陰が不足し、陽気が立ち上がりすぎてしまいます。そのため動悸、不眠、煩躁感が表れます。

 

そして、麻黄が引き上げた生気を杏仁が内側に引き戻す。これによって、内部から外部への物資の供給と、余った物資の回収ができるようになります。強力な生気を運ぶベルトコンベアのイメージです。

 

その麻黄と杏仁で作った内から外、そして外から内へ流れるベルトコンベアに乗せて運ぶものをプラスします。三拗湯ならそれは甘草で膨らませた脾気。麻黄湯なら脾気に加えて、桂枝で膨らませた腎気と発散力です。桂枝は体の深部である腎から肺の領域まで生気をまっすぐに引き出す力があります。ウィルスに対抗するには肺気より腎気の封蔵の力が効果を出します。津液の補充は少なく、陽気へのみ働きかけるのが葛根湯や桂枝湯との大きな違いです。

 

この三拗湯の働きを押さえておくと、この系統の薬の理解に薬に足します。麻杏甘石湯は皮膚表面に石膏の清熱効果を届ける、麻杏薏甘湯は肺の領域に薏苡仁の湿を除く力を届ける方剤です。同じ骨格を持っている神秘湯などは三拗湯に厚朴、陳皮、紫蘇、柴胡を加えています。気を動かす力を三拗湯にのせてさらに力強く肺に届ける処方なので、かなり気に揺さぶりがかかり、患者の素体に力がないと危険です。そのため発作時などは禁忌とされます。

 

麻黄湯の解熱の効果は清熱ではなく、発汗により陽気を外に出します。陽気が体表に到達できず、寒気があり汗のない状態が適応です。麻黄はエフェドリンを含み、動悸や不眠を助長するので陰虚症特にに注意し、妊婦、小児には注意して使わなくてはいけません。気血津液どれかが虚している者には使用を控え、大量の発汗が心配な場合には白芍で津液を補充したり、五味子ですこし発汗を止めるような調整をすることもあるようです。

 

心配であればより発散力が少なく、津液の補充がある桂枝湯の方が安全に使えます。ただ、どちらにしても桂枝を含む以上は腎気の肺領域への穿通が期待できますが、“引火帰原”という、逆に邪気が腎に入り込むすきも与えてしまうので注意が必要です。

 

 

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