中医学:病因・内傷

病気の原因となる”病因”には大きく分けて2つ。外感と内傷です。外感は外から邪気が体内に入る病態で、疾病の性質は実で解表など外を治す治療が主軸となります。今日のような暑さで熱中症を起こす、体が冷えて風邪をひくなどが外感によるものです。

それと引き換え、内傷は臓腑の不調が全身の不調に及んでいくものです。疾病の性質は虚で、補血、補気など補剤による治療が中心になります。今日はこの内傷について少し詳しくお話しします。

誰しも、気持ちが落ち込んだり、疲れがたまることで体調が悪くなる、ということはあるものです。一番身近な内傷による体調不良ではないでしょうか。内傷は主に2つに分けることができます。一つは心の疲れである七情と、もう一つは体の疲れである飲食と老逸です。

まず七情とは、喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七情です。単にストレス、と言ってしまえば簡単ですがそれぞれどんな感情を強く持つかによって、どこに、どのような影響を与えるかは変わってきます。

以下、七情とつながりのある臓の関係です。

  • 心は喜を主るが、喜びすぎると心を損傷する。
  • 肝は怒を主るが、怒りすぎると肝を損傷する。
  • 脾は思を主るが、思いすぎると脾を損傷する。
  • 肺は悲憂を主るが、悲しみ、憂いすぎると肺を損傷する。
  • 腎は驚怒を主るが、驚き恐れすぎると腎を損傷する。

七情によって各臓器損傷を受けやすいですが、特に影響が大きいのは心・肝・脾の三臓です。

【怒】
怒ると気が上るといわれています。肝の疏泄機能に異常が生じ、肝気が横逆して上衡し、その結果突然倒れたり、意識不明、人事不省に陥ることがあります。

【喜】
喜びすぎると、気が緩むと考えます。良さそうですが、”気が緩んだ”状態は一つのことに集中できないということです。端からみたらやる気がない人、みたいな印象だと思いますが、これは心血虚の状態です。ひどくなると失神、狂乱がおきることがあります。

【悲(憂)】
悲しみすぎると気が消えると言われます。気が消えると肺気が弱まり、意気消沈する、元気や覇気がなくなります。呼吸機能が弱くなり、息切れや喘息、表虚となって自汗がでたり、風邪を患いやすくなります。

【恐】
恐れすぎると気が下る、といいます。気が下ると腎の封蔵機能(ものを閉じ込めておく力)が低下します。極端ですが、その結果二便に影響がでると大便失禁や遺尿、生殖器に影響が出ると流産などが起きやすくなります。

【驚】
気が乱れる、といいます。突然驚きすぎると心神が帰るところがわからなくなり、混乱状態になります。恐と驚は両方腎に属する感情でとても似ています。違いとしてははっきりした対象に対して抱く感情を恐とし、意識せず突然受けるショックが驚と分けられているようです。

【思】
思うと気結(けつ)す、といいます。あまり思いを巡らせすぎると、脾気を損傷し、湿などうっ滞が生じやすくなります。また、考えすぎることで血をすり減らし心血虚となり心悸・不眠・多夢などの症状が増えることがあります。

このように過度の感情の揺れ動きは特定の臓器に影響を与え、またその臓器がもともと虚していると、つながりのある特定の感情も揺れ動きやすくなります。

内傷はまた、いわゆる感情だけではなく体の疲れによっても起きることがあります。大きく分けて、飲食による胃腸の使いすぎ、さらに働き過ぎによる肉体の疲れがあります。

まず一つ目は飲食による胃腸の使いすぎです。この飲食を原因とした体の不調を”飲食失節”といいます。不適切な飲食行動は脾胃を損傷し、さらに脾胃の損傷は他の臓器に影響を与えます(この辺りは脾胃論が詳しい)。この飲食失節には3種類あります。

  • 飢飽失常
    これは飢餓と過食のことです。飢餓はもちろん栄養不足から気血不足や抵抗力の低下を引き起こします。また、過食は脾胃の負担により食積や食滞を引き起こします。
  • 飲食不潔
    これは不潔なものを食べたり、毒物を食べることで消化不良、食中毒などを起こすことです。
  • 偏食
    これは食の好き嫌いや偏りです。甘いものを食べていると消渇(糖尿病)になったり、辛いものを食べ過ぎると胃腸に熱がこもり、お腹がはる、便秘などの症状が現れるなどがこれに当たります。また、冷たいもの、生ものの食べ過ぎも脾胃の損傷を招きやすいので注意が必要です。酸味は肝、苦味は心、甘味は脾、辛味は肺、鹹味は腎というように五味をバランスよく食べることも大切です。これにより臓腑に偏盛・偏衰が現れにくくなります。

次は肉体の疲れです。

  • 労力過度
    これは単純な働き過ぎ、体の使いすぎのことです。
  • 心労過度
    七情の項でご案内したように、心も遣いすぎれば心血を消耗します。
  • 房事過度
    落語で”短命”という演目があるようですが、まさにその話のように、夫婦の情事が多いことによる腎精の使いすぎのことです。落語のように命までは落とさないと思いますが、女性なら早めの閉経や男性なら遺精が起きるようです。
  • 安逸過度
    これは休みすぎ、動かなさすぎ、ということです。動かないことで気血の流れが滞り、病を引き起こすと考えられています。

本当に当たり前ですが、体の疲れに関しては飲食・労働・休息の3つとも適度が大切ということです。何事も頑張りすぎず、適量の飲食、適度な労働と休息が疾病をさける近道です。

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