中医学:六淫・火邪

 いよいよ最後、熱の邪気、火邪です。単純に熱い邪気というと暑邪との違いは?と思うかもしれません。火邪は六淫の中で他と少し格の違う存在です。

 火邪についてお話しする前に、「病」という漢字に注目してみましょう。「病」はやまいだれに丙(ひのえ)が入っています。火の象徴である丙が上からも下からも押さえられています。この火の熱が塞がれて外に発散できない状態を古来の中国では病と捉えていました。実はこの状態がまさに火が毒邪となった火邪の状態です。

 火邪は陽が極まった時に生じます。「火邪」と聞くとこれまで出てきた熱の病証や暑邪との違いは?と思った方も多いのではないでしょうか。もちろん火邪と暑邪ははっきりと異なるものです。これまでご紹介してきた六淫が原因となって熱を生じるものは風熱、暑熱、湿熱、燥熱などがあります。熱を作るこれらは季節性が強く、基本的には外から感受する外淫によるものです。一方に火は内生のものが多く、心火、胆火、肝火などがあります。そして、先に挙げた外淫の風・暑・湿・燥そして寒までも体内に鬱していると火に転化することがあります。この点が火邪が他の邪気と別格と言った点です。この外邪が火邪へと変化したものを「五気化火」と言われます。また、季節性の強い外淫だけではなく喜・怒・思・悲・恐などの情志もまた過剰になると火に転じることがあります。この情志による火邪は「五志化火」と称されます。ただ、火と熱は基本的にはよく似た性質と発病の特徴を持ちますので、治法などは大きな区別なく論じられることが多くあります。

 火熱の性質と発病の特徴

火熱は陽邪、その性は炎上
 火熱は陽邪であり、よく動き上に向かうため、「炎上」の性質があると言われています。そのため頭部に症状が出やすく、高熱、煩渇、面紅、目赤、発汗などが現れます。
 また、火の炎上は神明をかき乱すといわれ、心煩、不眠、狂躁、妄動、神昏、譫語などの精神症状も現れやすくなります。

気と津液を損傷しやすい
 陽邪である火邪は人体の津液を消耗します。そのため唇や喉の乾燥感、口渇喜飲、尿赤短少、大便秘結などの津液損傷の症状が出ます。また、気を消耗すると倦怠感、懶言、精神疲労、脱力感などの気虚症状をきたします。

生風、動血しやすい
 火邪は内生の熱のため肝陰を消耗し、筋脈が濡養できなくなると肝風が生じます。肝風は「熱極生風」といわれます。ちょうど熱によって上昇気流ができて竜巻などが起きるようなイメージでしょうか。この肝風が起きると、筋肉が興奮状態になるため四肢の痙攣、頸頂部の強直、角弓反脹などが症状として表れます。(角弓反脹とは体が痙攣で反り返った状態。熱生痙攣や感染による痙攣などで起きることがあります)
 また、火邪が脈絡を損傷すると血熱、といわれ出血症状が現れることがあります。吐血、咳血、衄血(歯茎や舌、鼻などの外因性ではない出血)、血尿、血便、皮膚出血、あるいは斑疹(感染が原因による皮膚紅斑)および、月経過多や崩漏などが現れます。気虚出血と異なり、火熱による出血は血の色が濃く、勢いがあるのが特徴です。

瘡瘍の形成
 火邪が深く血分に入り込み、一定の箇所にとどまると血肉を腐食する瘡瘍が起こります。瘡瘍は皮膚にできる湿疹ですが、その中でも特に癰腫と呼ばれる急性化膿性疾患が火邪によって起きます。癰腫は赤く腫れ上がり、熱と痛みを伴います。

火邪による病証

 火熱が強くなると出血を起こす、肝風を引き起こします。出血症状は血分に入り込んだ熱を冷ますため、清熱涼血薬を用います。高熱・煩燥・顔面紅潮・目の充血などが強いときは神経の興奮を抑える清熱瀉火薬が用いられます。譫語や四肢の痙攣などの肝風を押さえるためには風を収める熄風薬に加え、熱の度合いで滋陰清熱などの薬を加えます。

 火毒はうっ滞した火邪の熱が血肉を腐食することです。瘡瘍の形成がこれにあたります。基本は清熱解毒薬を用い熱と、それに伴う湿を排除します。痒みなど風の症状が強ければ疏風薬も併用します。

代謝熱のうっ滞と水毒についてしっかり書かれた本です。参考になります。

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